配色システムが重要な理由
Webデザインにおける配色は、単なる見た目の美しさだけではありません。
ブランドの一貫性を保ち、ユーザー体験を最適化し、さらに運用時のメンテナンスを効率化するために「配色システム(カラーシステム)」を設計することが重要です。
特に大規模なWebサイトやアプリでは、プロジェクト全体で 色のルールが統一されているか がデザイン品質に直結します。
配色システムの基本構成
- ベースカラー
背景や本文テキストに用いる中立的な色。例:白(#FFFFFF)、黒(#000000)、グレー系。 - メインカラー(ブランドカラー)
サイトやサービスの印象を決定づける中心色。ロゴやCTAボタンに多用。 - アクセントカラー
注意喚起やリンク強調など、補助的に使う差し色。使いすぎず、ピンポイントで配置。 - 状態カラー(UIステート用)
- Success(成功):#4CAF50
- Warning(警告):#FFC107
- Error(エラー):#F44336
- Info(補足情報):#2196F3
これらを CSS変数やデザイントークン として定義しておくと、運用やデザイン変更が圧倒的に楽になります。
配色システムの実装例
ここからは、実際にWebサイトに組み込むことを想定した3つの例を紹介します。
視覚的に色を確認できるカスタムHTMLと、対応するCSS変数の定義を合わせて掲載します。
例1:ブランドカラーセット (ブランドを象徴する色)
例2:UIステートカラー(ユーザーインターフェースの状態を示す色)
例3:ライト/ダークテーマ切替
実務Tips(ベストプラクティス集)
3色原則(ベース・メイン・アクセント)を軸に設計する
まずはベース・メイン・アクセントの3色で構成し、必要に応じて補助色を追加します。色数を絞るほど一貫性と保守性が高まります。
CSS変数(デザイントークン)で色を一元管理する
:root { --color-brand: …; --color-text: …; }
のように変数化し、コンポーネント側は var()
参照に統一。テーマ切替・改修が1か所で完了します。
ライト/ダークの両テーマを最初に定義しておく
設計初期から [data-theme="dark"]
などのスコープを用意。背景・テキスト・境界色を最低限のセットで用意しておくと破綻が起きにくくなります。
UI状態色(Default/Hover/Active/Disabled)を事前に決める
ボタン・リンクなどの状態変化色をあらかじめ定義。運用で迷わず、アクセシビリティ上も一貫したフィードバックを提供できます。
コントラスト比(WCAG AA)を満たす
本文テキストは最低 4.5:1 を目安に。見出しや大きな文字は 3:1 でも可。コントラスト不足は可読性とCVRに直結します。
ツールは「Adobe Color → Coolors → 実画面検証」の流れ
カラーホイールで仮説を作り、ジェネレーターでバリエーションを出し、実UIで確認。ツールは補助、最終判断は画面上の可読性です。
命名は「意味ベース」で統一する
--blue-500
といった色名ではなく、--color-brand
や --color-accent
のように役割で命名。長期運用で混乱を防げます。
レビュー用の最小パレットを用意する
主要UIに使う 6〜8色(背景/テキスト/境界/ブランド/アクセント/状態色)を「カード表示」で共有。合意形成が早まります。
よくある質問
Q. Webデザインで使う色は何色がベストですか?
A. 基本は3色(ベース・メイン・アクセント)が最適です。必要に応じて補助色を追加しますが、使いすぎると一貫性が損なわれます。
Q. Adobe Colorだけで配色は決められますか?
A. 初期の仮説作りには最適ですが、最終判断は実UI上の可読性とコントラストで行います。CoolorsやColormindの併用も有効です。
Q. CSSでの管理はSass変数とCSS変数どちらが良いですか?
A. 実行時切替(ダークテーマ等)を考えるならCSS変数が有利です。ビルド時の計算や関数はSass、最終配色はCSS変数で併用するのが実務的です。
Q. コントラスト比の目安はどれくらい?
A. 一般的な本文は 4.5:1 以上、見出しや大きい文字は 3:1 以上が推奨です。達しない場合は明度差や彩度を調整してください。
Q. ライト/ダークテーマの切替で注意点は?
A. 単純に色を反転させず、背景・文字・境界・強調の役割ごとに“対となる色”を決めます。影や境界のコントラスト不足に注意してください。
Q. 状態色(成功・警告・エラー)は固定で良い?
A. 一般的な色相はありますが、ブランドトーンとの整合性を優先します。色覚多様性を考慮し、色だけに依存しないアイコンやテキストも併用しましょう。