「Web制作を始めたいけど、どのくらいのスペックのパソコンを買えばいいかわからない」 「おすすめPCの記事を読んでも、結局どれが自分に合うのか判断できない」
パソコン選びで本当に大切なのは、「何をするか」から逆算してスペックを決めることです。おすすめの機種は毎年変わりますが、スペックの判断基準を知っておけば、いつ買っても失敗しません。
この記事では、20年以上Web制作に携わってきた筆者が、用途別に必要なスペックを具体的に解説します。「自分にはどのレベルのPCが必要か」を読み終わる頃にはハッキリ判断できるようになっています。
パソコンスペックの基礎知識|まず知っておきたい4つのパーツ
パソコンの性能を決める主要パーツは4つあります。すでにご存知の方は読み飛ばしてOKです。
CPU(プロセッサ)|パソコンの「頭脳」
CPUはすべての処理を担当するパーツで、パソコンの処理速度を左右します。Web制作においてはコードのビルド(コードを実行可能な形に変換する処理)やデザインソフトの動作速度に直結します。
代表的なCPUブランドは以下の3つです。
- Intel Core シリーズ(i3 / i5 / i7 / i9):数字が大きいほど高性能。世代(第12世代、第13世代など)も重要で、同じi5でも新しい世代のほうが性能が高い
- AMD Ryzen シリーズ(Ryzen 3 / 5 / 7 / 9):Intelと同等の性能帯。コスパに優れたモデルが多い
- Apple M シリーズ(M1 / M2 / M3 / M4):Mac専用チップ。省電力ながら高い処理性能を持つ
メモリ(RAM)|作業台の広さ
メモリは「同時に開ける作業の量」を決めるパーツです。ブラウザのタブを何十枚も開きながらVSCodeとFigmaを同時に使う、といった場面でメモリ不足だとパソコンが重くなります。
Web制作では最低8GB、推奨16GB以上が目安です。
ストレージ(SSD / HDD)|データの保管庫
ストレージはファイルを保存する場所です。必ずSSDを選んでください。HDDと比較してデータの読み書き速度が数倍〜数十倍速く、パソコンの起動やファイルの読み込みが圧倒的に快適になります。
容量は256GB以上が最低ライン。デザインデータを多く扱う場合は512GB〜1TBあると安心です。
GPU(グラフィックボード)|映像処理の専門家
GPUは画像や映像の処理を専門に行うパーツです。Web制作だけなら、CPUに内蔵されたGPUで十分です。
独立GPU(NVIDIA GeForceやAMD Radeonなど)が必要になるのは、3Dグラフィック制作や高解像度の動画編集を行う場合です。Webデザインや通常のコーディングでは不要なので、無理に搭載モデルを選ぶ必要はありません。
用途別スペック早見表|あなたに必要なのはどのレベル?
Web制作といっても、やることによって必要なスペックは大きく変わります。以下の3段階で考えると選びやすくなります。
| 学習・入門 | 実務・開発 | デザイン・クリエイティブ | |
|---|---|---|---|
| こんな人 | HTML/CSSの学習を始めたい、プログラミングスクールの受講を検討中 | JavaScript/React/Next.jsで開発、Docker使用、複数プロジェクト並行 | Photoshop/Illustrator/Figmaでデザイン、高品質な色再現が必要 |
| CPU | Core i5(第10世代〜)/ Ryzen 5 / M1以上 | Core i7(第12世代〜)/ Ryzen 7 / M2以上 | Core i7以上 / M2 Pro〜M3 Pro以上 |
| メモリ | 8GB(できれば16GB) | 16GB以上(Docker使用なら必須) | 16〜32GB |
| ストレージ | SSD 256GB以上 | SSD 512GB以上 | SSD 512GB〜1TB |
| GPU | 内蔵GPUで十分 | 内蔵GPUで十分 | 内蔵GPU可(3D・動画なら独立GPU) |
| ディスプレイ | FHD(1920×1080)以上 | FHD以上 | sRGB 100%以上推奨 |
| 価格帯の目安 | 8〜12万円 | 15〜20万円 | 20〜35万円 |
それぞれ詳しく解説します。
レベル1:学習・入門用スペック
HTMLやCSS、JavaScriptの基礎学習が中心のフェーズです。VSCodeでコードを書き、ブラウザでプレビューを確認するのがメインの使い方になります。
このフェーズで実際にやること
- VSCode(テキストエディタ)でHTML/CSS/JavaScriptを書く
- ブラウザ(Chrome)でプレビュー確認
- Figmaの基本操作を学ぶ(ブラウザ版を使用)
- 簡単なレスポンシブデザインの確認
必要スペックの根拠
VSCode自体は比較的軽量なソフトですが、拡張機能を入れたりChrome DevToolsを開いたりすると、メモリ使用量は意外と増えます。8GBあればギリギリ足りますが、ブラウザのタブを10枚以上開くと厳しくなるため、予算が許すなら16GBを選ぶのが無難です。
CPUはCore i5 / Ryzen 5クラスで十分。学習段階ではビルドツール(webpack、Viteなど)を頻繁に使うことは少ないため、この性能帯で快適に作業できます。
注意点
「安いから」と2〜3万円台の格安ノートPCを買うのはおすすめしません。CPUがCeleron / Pentiumクラスだったり、メモリが4GBだったりすると、VSCodeすらまともに動かないことがあります。最低限のラインとして8万円前後は見ておきましょう。
レベル2:実務・開発用スペック
フロントエンド開発を本格的に行うフェーズです。React / Next.js / Vue.jsなどのフレームワークを使い、Gitでバージョン管理をしながら開発を進めます。
このフェーズで実際にやること
- React / Next.jsなどのモダンフレームワークでの開発
- npm / yarnでのパッケージ管理とビルド
- Dockerでのローカル開発環境構築(WordPressのローカル環境など)
- Gitでのバージョン管理
- Figmaでデザインカンプの確認と実装
- ブラウザの複数タブでレスポンシブ確認
必要スペックの根拠
このフェーズでメモリ16GBが必須になる最大の理由はDockerです。Dockerはコンテナ型の仮想環境(パソコンの中にもう1台仮想的なコンピュータを動かすしくみ)で、これだけで2〜4GBのメモリを消費します。VSCode、Chrome、Dockerを同時に起動すると、8GBではまず足りません。
CPUもCore i7 / Ryzen 7クラスが欲しいところです。Next.jsのビルドやTypeScriptのコンパイルはCPUパワーを使うため、i5クラスだとビルドの待ち時間が長くなりストレスを感じるようになります。
実体験からのアドバイス
筆者の経験上、「メモリ8GBで実務をやっている」という人は、かなりの確率で「よくパソコンが固まる」と言っています。特にDockerとChrome(20タブ以上)の同時使用は、8GBでは実質不可能です。実務を見据えるなら、メモリ16GBは妥協しないでください。
レベル3:デザイン・クリエイティブ用スペック
PhotoshopやIllustratorなどのAdobe系ソフトをフル活用するフェーズです。高解像度の画像やPSDファイルを扱うため、より高いスペックが求められます。
このフェーズで実際にやること
- Photoshop / Illustratorでのデザイン制作
- Figmaでの本格的なUIデザイン
- 高解像度画像の編集と書き出し
- デザインと実装の並行作業
必要スペックの根拠
Adobe Photoshopの推奨メモリは16GB以上です。Illustratorと同時に使うなら32GBあると余裕が生まれます。
ディスプレイの色域(ディスプレイが表示できる色の範囲)も重要なポイントです。Web制作では**sRGB 100%**のカバー率があれば十分です。Adobe RGBやDCI-P3は印刷や映像制作で使われる規格なので、Webデザインのみであれば不要です。
ストレージは512GB以上を強くおすすめします。PSDファイルは1ファイルで数百MBになることもあり、256GBではすぐにいっぱいになってしまいます。
GPUについて
Webデザインに限定するなら、独立GPU(グラフィックボード)は基本的に不要です。PhotoshopやIllustratorはGPUアクセラレーション(GPU支援による高速化)に対応していますが、CPU内蔵GPUでも十分動作します。
独立GPUを検討すべきなのは、3Dオブジェクトのレンダリングや、After Effectsでの映像制作、4K動画の編集を行う場合です。
Mac vs Windows|Web制作者はどっちを選ぶべき?
結論から言うと、どちらでもWeb制作はできます。ただし、それぞれに向いている場面があります。
Macが向いている場面
- Retinaディスプレイの色再現性が高い:デザイン作業で色の正確さが重要な場合に有利
- フォント環境が優れている:macOSにはヒラギノやSan Franciscoなど、Web制作で参考になるフォントが標準搭載
- Unix系OS:ターミナルでの操作やGit、Node.jsなどの開発ツールとの親和性が高い
- iPhoneでの実機テストが容易:iOS SafariのデバッグにはMacが必須
Windowsが向いている場面
- コストパフォーマンスが圧倒的に良い:同スペックならMacより数万円安く手に入る
- 機種の選択肢が豊富:予算やサイズ、デザインなど自分の好みに合わせて選べる
- 市場シェアが高い:クライアントの多くがWindows環境のため、同じ環境での表示確認がしやすい
- IE/Edge固有の問題をすぐ確認できる:エンタープライズ案件ではまだEdge対応が必要な場面がある
現役エンジニアの本音
周囲のWebデザイナー・フロントエンドエンジニアを見ると、Macユーザーの比率がやや高い印象です。ただし、「Macじゃないとダメ」ということは全くなく、VSCode、Figma、Chrome DevToolsなど主要ツールはすべてクロスプラットフォームで動作します。
迷っているなら、予算重視ならWindows、開発の快適さ重視ならMacという判断で問題ありません。
ノートパソコン vs デスクトップ|Web制作にはどっち?
迷ったらノートパソコンを選びましょう。
Web制作者はカフェでの作業、クライアントとの打ち合わせ、コワーキングスペースでの作業など、場所を選ばず仕事をする場面が多いです。ノートパソコン1台あれば、どこでも同じ環境で作業できます。
自宅作業がメインの場合は、ノートパソコン+外付けモニターの組み合わせがおすすめです。コーディング画面とブラウザプレビューを横に並べて表示できるため、作業効率が大幅に向上します。
画面サイズの選び方
- 13〜14インチ:持ち運びを重視する場合。カフェや移動中の作業が多い人向け
- 15〜16インチ:作業領域と携帯性のバランス型。自宅でもサブモニターなしで作業しやすい
13インチでもWeb制作は可能ですが、Figmaのデザインカンプとコードを同時に見るにはやや狭く感じます。持ち運びの頻度が少ないなら15インチ以上がおすすめです。
よくある失敗パターン5選
1. 「将来のため」に最上位モデルを買う
Web制作だけなら、MacBook Pro M3 Maxや、RTX 4090搭載のゲーミングPCは完全にオーバースペックです。パソコンは3〜5年で買い替えるものと考え、「今の用途に合ったスペック」を選びましょう。
2. メモリ8GBで実務に入る
学習段階では8GBでも何とかなりますが、実務に入った途端に足りなくなります。「あとからメモリを増設すればいい」と思っていても、最近のノートPCはメモリがオンボード(基盤に直接取り付け)で増設不可のモデルが増えています。最初から16GBを選ぶのが最も経済的です。
3. GPU搭載モデルを無意味に選ぶ
「クリエイティブ用途ならGPU必須」という誤解がありますが、Webデザイン+コーディングの範囲では独立GPUは不要です。その分の予算をメモリやSSDの容量に回したほうが快適になります。
4. HDDモデルを選んでしまう
格安PCの中にはまだHDD搭載モデルが存在します。SSDとHDDの速度差は体感で数倍以上。起動に数分かかるPCでは、開発のモチベーションが確実に下がります。必ずSSD搭載モデルを選んでください。
5. ディスプレイの解像度を確認しない
FHD(1920×1080)未満のディスプレイだと、レスポンシブデザインの確認やFigmaでの作業がかなり窮屈です。最低でもFHD以上のモデルを選びましょう。
予算別おすすめスペック構成
具体的な機種名は時期によって変わるため、ここでは「この予算ならこのスペックを目安に探す」という指針を示します。
8〜12万円(学習・入門向け)
- CPU:Core i5(第12世代〜)/ Ryzen 5 5000番台〜 / Apple M1
- メモリ:16GB
- ストレージ:SSD 256〜512GB
- ディスプレイ:14〜15インチ FHD
この価格帯ではLenovo IdeaPadシリーズやASUS VivobookシリーズなどWindows機が狙い目です。Apple製品だとMacBook Air M1の整備済製品(Appleが検品・部品交換を行い新品同様の品質を保証した製品)が候補になります。
15〜20万円(実務・開発向け)
- CPU:Core i7(第12世代〜)/ Ryzen 7 / Apple M2〜M3
- メモリ:16GB
- ストレージ:SSD 512GB〜1TB
- ディスプレイ:14〜15インチ FHD以上
MacBook Air M2〜M3がこの価格帯の鉄板です。Windows機ではHP ENVY、Dell XPS、ThinkPad Xシリーズなどが候補になります。
20〜35万円(デザイン・クリエイティブ向け)
- CPU:Core i7以上 / Apple M3 Pro以上
- メモリ:16〜32GB
- ストレージ:SSD 1TB
- ディスプレイ:高色域(sRGB 100%以上)
MacBook Pro 14インチ(M3 Pro)が定番。Windows機ならマウスコンピューターのDAIVシリーズやASUS ProArt Studiobookシリーズがクリエイター向けに設計されています。
まとめ|スペック選びで失敗しないための3原則
1. 用途から逆算する 「何をするか」を明確にしてからスペックを決めましょう。学習段階なのに20万円以上のPCは必要ありませんし、Docker環境を使う実務なのにメモリ8GBでは足りません。
2. メモリは最初から16GBを選ぶ あらゆる用途で最もコスパの良い投資です。後から増設できないモデルが増えているため、購入時に16GB以上を確保しておきましょう。
3. 機種名ではなくスペックで判断する おすすめ機種は半年で変わりますが、必要なスペックの基準は変わりません。この記事のスペック早見表を基準に、その時点で手に入る最もコスパの良いモデルを選べばOKです。
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