Webサイトのファーストビューにおいて、印象的な表現はユーザーの視線を惹きつけ、記憶に残る導線を作ります。その中でも、「文字の中に背景が透ける」という手法は、視覚的なインパクトがありつつ、情報の伝達性も高い優れた表現です。
本記事では、スクロールに応じて背景が切り替わり、中央に固定されたテキストにのみ背景が透けて表示される演出「ScrollTextMask(スクロール・テキスト・マスク)」のコンセプトと実装の考え方を紹介します。
視覚的な重なりと“背景の主張”
Webにおける「背景」は、単なる装飾ではなく、時にコンセプトそのものを伝える役割を持ちます。ScrollTextMaskでは、その背景がテキストの中にだけ露出する構造を採用することで、背景そのものがメッセージの一部となるという設計思想がベースにあります。
ユーザーがスクロールすることで、背景が変化し、まるで“文字を通して世界を覗き見る”ような体験ができます。このような「意味を持った視覚的構造」は、クリエイティブ系サイトやポートフォリオ、ブランドサイトのヒーロービジュアルに最適です。
技術的アプローチ
この演出は、比較的シンプルな技術で実装できます。特別なライブラリを必要とせず、主に以下の3つの仕組みを組み合わせています。
- 背景画像の切り替え(100vhごとのsection)
- テキストにだけ背景を透過するCSSプロパティ
- スクロール量に応じてテキストを動的に制御するJavaScript
CSSでは、background-clip: text
と-webkit-text-fill-color: transparent
を使うことで、テキスト内に背景画像を表示させることが可能になります。さらに、JavaScriptでスクロール位置を監視し、背景画像やフォントサイズの変更を動的に行うことで、視覚的な遷移を滑らかにしています。
デザイン意図とUI体験
このScrollTextMaskは、単なるアニメーションではなく、構造と視線誘導を両立する演出です。テキストは常に中央に固定されており、ユーザーがスクロールすることで背景が変化していきます。
この構造のメリットは、「ユーザーがスクロールすることで意図的に演出の変化を体験できる」という点です。いわば、ユーザーの操作と視覚の変化がシンクロしているため、操作に対するフィードバックが強く、印象に残る体験をつくることができます。
また、テキストに透ける背景が切り替わる際にはフェードアニメーションを加えることで、急激な切り替えによる視覚的ストレスを避けています。結果として、自然で洗練された印象を与えることができます。
カスタマイズの幅と応用例
ScrollTextMaskは、非常に柔軟にカスタマイズ可能です。以下のようなアレンジが考えられます。
- 背景を動画やSVG、グラデーションに変更する
- フォントサイズのアニメーション速度や最大サイズの調整
- スクロール量ではなく時間経過によって背景を切り替える
- GSAPなどのアニメーションライブラリと組み合わせる
- 文字ではなくロゴマークの形で背景を透けさせる
さらに、position: fixed
でテキストを常に中央に保つことで、他の要素とぶつからず、独立した演出として存在させることができるのも大きな利点です。視線の集中がコントロールしやすいため、訴求力のあるメッセージやスローガンの表示にも適しています。
終わりに
「ScrollTextMask」は、CSSとJavaScriptの基本機能を活用することで、驚くほど印象的なビジュアル体験を生み出すことができる表現です。背景を見せる場所を“テキストの中”という限られた範囲に制限することで、意図を凝縮し、ユーザーの目を自然に誘導できます。
複雑なライブラリや3D処理を使わずとも、Webデザインにおける表現力はまだまだ広がる余地があります。スクロールという最も自然な操作の中に、魅力的なアニメーションや視覚表現を織り込むことで、ブランドの世界観を強く伝えることができるのです。
👉 完成したコードはCodePenで公開しています。
See the Pen ScrollTextMask by masakazuimai (@masakazuimai) on CodePen.