「WEBマーケティング」という言葉に騙されていませんか?
SEO、SNSマーケティング、広告運用、コンテンツマーケティング、インフルエンサーマーケティング…WEBマーケティングの世界には専門用語が溢れています。新しい手法が次々と登場し、「最新のアルゴリズムに対応しなければ」「バズる投稿テンプレートを使わなければ」と焦りを感じている方も多いのではないでしょうか。
しかし、ここで一度立ち止まって考えてみてください。WEBマーケティングは本当に「特殊な専門技術」なのでしょうか?デジタルだから、従来のビジネスとは全く違う原理で動いているのでしょうか?
答えは「No」です。
WEBマーケティングの本質は、数百年前から変わっていません。人間の行動原理は現実世界でもWEB上でも同じです。信頼できる人から買いたい、迷ったら買わない、損をしたくない、楽な方を選ぶ…こうした心理は、江戸時代の商人が顧客と向き合っていた時代から何も変わっていないのです。
WEBマーケティングで成功するために必要なのは、最新のテクニックではありません。必要なのは、商売の普遍的な原則を理解し、それを実践することです。
江戸時代の商人が知っていた成功法則「三方良し」
三方良しとは何か
「三方良し」とは、近江商人(現在の滋賀県出身の商人)が大切にしていた商売の理念です。
- 売り手良し:商人自身が適正な利益を得られること
- 買い手良し:顧客が本当に価値あるものを手に入れられること
- 世間良し:取引が社会全体にとっても良い影響を与えること
この3つすべてが満たされて初めて、商売は長く続くという考え方です。
重要なのは、「売り手の利益だけ」を追求するのではなく、買い手と世間も含めた全体の幸福を考えるという点です。短期的に儲けることは誰にでもできます。しかし、長期的に信頼され、繁栄し続けるためには、三方すべてが良い状態でなければなりません。
なぜ今この原則が重要なのか
現代のWEBマーケティングを見渡すと、三方良しとは真逆の手法が溢れています。
誇大広告で注目を集め、低品質な商品を売りつける。AIで大量生成した中身のない記事でアクセスを稼ぐ。アフィリエイト報酬の高い商品を、本当に良いかどうかに関わらず勧める。こうした「刈り取り型」のマーケティングは、短期的には数字が出るかもしれませんが、長続きしません。
炎上、ステマ問題、信頼の失墜…刈り取り型マーケティングの末路は、いつも同じです。
一方で、現代の経営理論はESG(環境・社会・ガバナンス)やSDGs(持続可能な開発目標)といった概念を重視するようになりました。企業は利益だけでなく、社会全体への貢献が求められる時代です。
興味深いことに、この「最先端の経営理論」と江戸時代の「三方良し」は、本質的に同じことを言っています。江戸時代の商人たちは、何百年も前に、持続可能なビジネスの原則を理解していたのです。
WEBにおける三方良しの再解釈
では、三方良しという原則を、現代のWEBマーケティングにどう適用すればよいのでしょうか。それぞれの「良し」を、WEBの文脈で再解釈してみましょう。
売り手良し:持続可能な利益を生む仕組み
WEBにおける「売り手良し」とは、広告費に依存せず、長期的に資産となる仕組みを作ることです。
有料広告は即効性がありますが、広告を止めた瞬間にトラフィックも止まります。これは持続可能とは言えません。一方、質の高いコンテンツを作り、検索エンジンから評価されれば、広告費ゼロで安定したトラフィックを得られます。時間とともに記事が蓄積され、ドメイン全体の価値が上がっていきます。
また、炎上リスクや信用毀損リスクを避けることも重要です。短期的な注目を集めるために過激な発言をしたり、誇大広告を打ったりすれば、長期的には信用を失います。信用の回復には、失うより何倍もの時間とコストがかかります。
売り手良しとは、目先の数字ではなく、長期的な信頼と資産の構築を優先することです。
買い手良し:本当に価値あるものを提供する
WEBにおける「買い手良し」とは、読者や顧客が実際に使える価値を提供することです。
「読んで良かった」「実務で役に立った」「問題が解決した」と思ってもらえるコンテンツを作る。誇大なタイトルで期待を持たせて、中身が薄いということがないようにする。初心者でも理解できる丁寧な説明を心がける。
WEB上では、読者の時間を奪うことは簡単です。クリックベイトのタイトルを付ければ、一時的なアクセスは稼げます。しかし、内容が期待を裏切れば、読者は二度と戻ってきません。
買い手良しとは、読者の時間を大切にし、本当に価値ある情報だけを届けることです。
世間良し:Googleと業界への貢献
WEBにおける「世間良し」を理解するには、まず「世間とは誰か」を明確にする必要があります。
WEBにおける世間とは、検索エンジン(Google)です。
Googleは、世間(インターネット利用者全体)の代理人として機能しています。Googleのアルゴリズムは、ユーザーにとって価値あるコンテンツを上位表示する仕組みです。つまり、Googleに評価されることと、世間に貢献することは同義なのです。
また、自分の携わる業界全体の発展を意識することも重要です。WEB開発を学ぶ人が質の高い日本語情報にアクセスできる環境を作る。業界全体の底上げに貢献する。他のサイトがコピーできないような独自の価値を提供する。
世間良しとは、自分だけが得をするのではなく、業界全体のパイを大きくすることです。結果的に、それが自分にも返ってくるのです。
施策を判断する三方良しチェックリスト
三方良しという原則を理解したところで、実際にどう使えばよいのでしょうか。
答えはシンプルです。新しい施策を実行する前に、次の3つの質問でチェックしてください。
3つの質問で施策を評価する
【売り手良し】持続可能か?
- この施策は長期的に資産になるか?
- 広告費に依存せず、積み上げ型か?
- 自分の時間・労力に見合うリターンがあるか?
- 炎上リスク、信用毀損リスクはないか?
【買い手良し】本当に価値があるか?
- 読者は実際に使える情報を得られるか?
- 誇大表現、誤解を招く表現はないか?
- 初心者でも理解できる説明か?
- 「読んで良かった」と思ってもらえるか?
【世間良し】Googleと業界に貢献しているか?
- Googleの検索品質ガイドラインに沿っているか?
- この情報がWEB上に増えることで、業界は良くなるか?
- 他のサイトのコピーではなく、独自の価値があるか?
- 長期的にリンク・引用される質か?
一つでも✗なら実行しない理由
重要なのは、3つすべてが○でなければ、その施策は実行しないということです。
「売り手良しだけど、買い手には微妙」という施策は、短期的には数字が出るかもしれません。しかし、長期的には必ず破綻します。買い手の信頼を失えば、リピートもなく、口コミも広がりません。
「買い手には良いけど、売り手は赤字」という施策も続きません。ビジネスとして成立しなければ、サービスを提供し続けることができなくなります。
「売り手と買い手は良いけど、世間には迷惑」という施策は、Googleからペナルティを受けたり、業界から批判されたりします。
三方すべてが良しでなければ、どこかで必ず歪みが生じます。三方良しというフィルターを通すことで、短期的な誘惑に負けず、本質的に正しい施策だけを選択できるのです。
三方良しの施策 vs そうでない施策【具体例】
理論だけでは分かりにくいので、具体例を見てみましょう。
✅ 推奨する施策の特徴
ロングテールキーワード→中間キーワードへの記事リライト
- 売り手良し:検索ボリューム増でトラフィック増、記事の資産価値向上
- 買い手良し:より包括的で実用的なコンテンツに進化、情報の網羅性が高まる
- 世間良し:検索意図に正確に応える質の高いコンテンツ、Googleの評価向上
例えば、「CSSグリッドジェネレーター」というロングテールキーワードの記事を、「CSSグリッド」という中間キーワードをカバーする包括的なガイドにリライトする。検索ボリュームは200倍になるかもしれませんが、それ以上に、読者はジェネレーターだけでなく、CSSグリッドそのものを理解できるようになります。
有料広告を使わない方針
- 売り手良し:広告費ゼロで持続可能な成長、利益率の向上
- 買い手良し:押し付けがましくない、自然な出会い、広告に邪魔されない体験
- 世間良し:Googleの評価基準(オーガニックな価値)に純粋に従う
広告を使えば短期的にはトラフィックを増やせます。しかし、広告費が利益を圧迫し、広告を止めれば終わりです。オーガニック成長は時間がかかりますが、一度軌道に乗れば、安定したトラフィックを広告費ゼロで獲得できます。
実務で即使えるコンテンツ重視
- 売り手良し:信頼構築、リピート訪問の増加、被リンクの自然発生
- 買い手良し:学んですぐ実践できる、時間の無駄がない
- 世間良し:WEB開発を学ぶ人への貢献、業界の底上げ
理論だけの記事ではなく、コピー&ペーストですぐ使えるコード例、実際のプロジェクトで遭遇する問題の解決法など、実務に直結する情報を提供する。読者は時間を節約でき、サイトへの信頼が高まります。
✗ 避けるべき施策とその理由
AIで大量生成した低品質記事
- 売り手:短期的にはトラフィック増?しかし持続性なし
- 買い手✗:実用性のない情報、読者の時間を無駄にする
- 世間✗:検索結果の質を下げる、業界全体の評判を落とす、Googleペナルティのリスク
AIツールで数百記事を一気に生成すれば、短期的にはアクセスが増えるかもしれません。しかし、中身のない記事は読者の信頼を失い、Googleからもペナルティを受けます。一つでも✗があるので、この施策は実行しません。
誇大なタイトルでクリック稼ぎ
- 売り手:短期的なPV増?しかし直帰率が上がり、評価が下がる
- 買い手✗:期待を裏切る、時間を無駄にする、二度と戻ってこない
- 世間✗:Googleの評価を下げる、クリック率は高いが滞在時間が短い
「たった3分で月収100万円!」のような誇大なタイトルは、クリックされるかもしれません。しかし、内容が伴わなければ、読者はすぐに離脱し、二度と戻ってきません。Googleもこのパターンを検知し、評価を下げます。
アフィリエイト収益優先の商品紹介
- 売り手:短期的収益、しかし信用を失う
- 買い手✗:本当に良いものではなく、高報酬のものを勧められる
- 世間✗:信頼性の低下、業界全体のアフィリエイトへの不信感
アフィリエイト報酬が高い商品を、本当に良いかどうかに関わらず勧める。読者は最初は騙されるかもしれませんが、やがて気づきます。一度失った信用を取り戻すことは、ほぼ不可能です。
三方良しの効果を測定する指標
「三方良しは美しい理想だけど、実際に効果はあるの?」と疑問に思う方もいるかもしれません。
安心してください。三方良しは理想論ではなく、実利があります。そして、その効果は数値で測定できます。
売り手良しの指標
- オーガニック検索流入の増加率:広告に頼らず、自然検索からどれだけ人が来るか
- リピート率:同じ人が何度も訪れるか
- ドメインオーソリティの向上:サイト全体の信頼性がどれだけ上がったか
これらの数値が継続的に上昇していれば、売り手良しが機能している証拠です。
買い手良しの指標
- 平均滞在時間:読者がどれだけ時間をかけて読んでいるか
- 直帰率の低下:訪問後すぐに離脱せず、他のページも見ているか
- ページ/セッション(回遊率):一度の訪問で何ページ見ているか
- SNSでのポジティブな反応:シェア、いいね、コメントの質
滞在時間が長く、直帰率が低く、回遊率が高ければ、読者が本当に価値を感じている証拠です。
世間良しの指標
- 被リンクの自然発生:他のサイトが自発的にリンクを張ってくれるか
- 検索順位の上昇:Googleがコンテンツを評価しているか
- 他サイトからの引用・参照:業界内で情報源として認識されているか
- 業界内での認知度:名前を知られているか
被リンクが自然に増え、検索順位が上がり、他サイトから引用されるようになれば、世間良しが機能している証拠です。
三方良しが機能している状態とは
三方良しがうまく機能すると、次のような好循環が生まれます。
広告費をかけずに、自然とトラフィックが増える。読者が何度も戻ってくる。他サイトから自然にリンク・引用される。検索順位が安定的に上昇する。
これらは全て「信頼」の数値化です。
信頼は目に見えませんが、データとして現れます。三方良しを実践すれば、この信頼が積み上がり、長期的な成功につながるのです。
テクニックより原則|WEBマーケティングの本質回帰
ここまで読んで、気づいた方もいるかもしれません。
この記事には、「最新のSEOテクニック」も「バズる投稿テンプレート」も「すぐに使える裏技」も出てきませんでした。なぜなら、それらは本質ではないからです。
WEBマーケティングは「新しいもの」ではありません。人間の行動原理は、現実世界でもWEB上でも変わりません。信頼できる人から買いたい、価値あるものにお金を払いたい、損をしたくない…こうした心理は、商売が始まった時から変わっていません。
江戸時代の近江商人が「三方良し」を大切にしたのと同じように、現代のWEBマーケティングでも、この普遍的な原則に従えばよいのです。
テクニックは移り変わります。Googleのアルゴリズムは常に更新され、SNSのトレンドは毎日変わります。しかし、原則は変わりません。三方良しという判断軸があれば、どんな施策を選ぶべきか、迷うことはありません。
次に新しい施策を考える時、こう自問してください。
「この施策は、三方良しか?」
売り手・買い手・世間の3つすべてが良しであれば、その施策は正しいです。一つでも✗があれば、立ち止まってください。
短期的なハックに振り回されず、長期的な信頼の構築に集中してください。それが、WEBマーケティングで成功する唯一の道です。