デザインを言語化する練習帳|“なぜ良いのか”を説明できる力を鍛えよう


“あえて”で済ませていませんか?

「このデザイン、ちょっとごちゃついてませんか?」
「いや、あえてこうしてるんです」

──Webデザインの学習初期にありがちなのが、「“あえて”を理由に根拠のないデザインを正当化してしまう」現象です。

確かに、“意図的に外すデザイン”は存在します。
ですが、それは基本やセオリーを理解したうえでの“応用”としてのあえてです。基本がわからないままの“あえて”は、ただの偶然であり、再現も改善もできません。このような状況から脱するために必要なのが──

「デザインを言語化する力」です。

デザインの言語化とは、UI・配色・余白などの判断根拠を論理的な言葉で説明するスキルのことです。「なんとなく良い」を「Z型の視線誘導に沿ってCTAを右下に配置している」のように、選択の理由を他者へ伝えられる状態を指します。


言語化で得られる4つのメリット

UIデザイナー兼著者のTom Greever氏も著書『Articulating Design Decisions』(O’Reilly Media, 2020)で「優れたデザインも、説明できなければ採用されない」と指摘しています。言語化のメリットを4つに整理しました。

1. デザインに再現性が生まれる

自分の中で「なぜこの余白にしたのか」「なぜこのフォントを選んだのか」を言葉にすることで、次のプロジェクトでも同じ判断軸を再利用できます。感覚に頼らない分、品質のブレが減ります。

2. プロとしての信頼を得られる

「なんとなく良さそう」で終わらず、「整列されていて安心感がある」と伝えれば、クライアントやチームから論理的に判断できるデザイナーとして信頼されます。

3. 具体的な改善提案ができる

「ごちゃついている」ではなく、「情報の階層が曖昧で視線が迷いやすい」と言えると、改善の打ち手が明確になります。ロジカルシンキングとラテラルシンキングの使い分けにも繋がる重要なスキルです。

4. ポートフォリオが強くなる

ポートフォリオで「意図」を語れることは、未経験〜中堅デザイナーが評価される最大の差別化ポイントです。採用担当者は「何を作ったか」よりも「なぜそう作ったか」を見ています。


言語化のための6つの観点

言語化には観察軸が必要です。以下の観点から1つずつチェックしていくと、自然に語彙が増えていきます。

観点チェックポイント例
全体印象清潔感がある/重厚感がある/信頼感がある
配色コントラストが効いている/温度感がある/意味がある色使いか
レイアウトグリッドに沿って整列されているか/視線誘導は自然か
フォントジャンプ率(サイズ差)/可読性/字間・行間
余白間の取り方が均等か/読みやすいか/窮屈さがないか
CTA目立つか/押したくなるか/位置やサイズは適切か

📝 記入例フォーム

気になるWebサイトを開いて、以下の項目に1〜2文ずつ書き出してみましょう。1サイト10分が目安です。

- 第一印象:
- 配色:
- フォント:
- レイアウト:
- 余白の取り方:
- CTAの位置とデザイン:

実践!言語化トレーニング3題

実際のUIを題材に、観察→言語化を3問通して練習します。先にあなた自身の答えをノートに書き出してから、模範解答例を開いて見比べてください。

お題①Webサイト(PC)の良い点

お題:このデザインの良い点を3つ言語化してください。

記事一覧ページの2カラムレイアウト例
✅ 模範解答例

1. 左右2カラム構成による視線整理

  • 画面を左:情報、右:ビジュアルで明快に分割しており、視線の迷いがない。
  • テキストが多い記事紹介において、画像とタイトルがバッティングしない設計になっている。

2. “余白”を活かしたモダンな構成

  • タイトルや著者情報の周囲に十分な余白があるため、文字が息苦しくなく読みやすい。
  • 日本語ならではの「間」の文化と親和性があり、テーマである「モダン」のイメージとも合致している。

3. 補色を活かした視覚的インパクト

  • 右側のポートレートは鮮烈な赤背景と黒衣装で、強い印象を与える。
  • 背景グリーンの大胆な使用は、ポートレートの赤との補色関係で視認性が高く、洗練された印象を作り出している。

お題②カードレイアウトの視線誘導

お題:視線誘導と情報構造に注目して言語化してください。

ビビッドカラーの3カードレイアウト例
✅ 模範解答例

1. 色によるリズム設計

  • 各カードが明快な背景色(ピンク・イエローグリーン・オレンジ)で統一され、視線の流れが水平方向に導かれる
  • トーンの明るさが整っているため、ビビッドでもチカチカせず心地よいリズムを感じさせる。

2. 情報構造の反復で読みやすさを担保

  • 上から「画像 → 日付 → タイトル → 著者」という同じ構成の繰り返しにより、見る側が迷わず情報を把握できる。
  • カード内の情報量も絞られており、1枚1枚の読み取り負荷が低い。

3. 写真と背景の補色設計

  • 被写体の色味や明暗に合わせて、背景が反対色や補色的に設計されており、写真が目立ちやすく調整されている
  • 特に中央カードは斜めに画像が配置されており、リズム感とアクセントを演出している。

お題③スマホUIの工夫

お題:スマホUIとしての工夫点を言語化してください。

スマホ向け1カラムUIの例
✅ 模範解答例

1. 1列レイアウトでスクロール最適化

  • コンテンツが1列で構成されており、スマホでの縦スクロール体験に自然に対応している。
  • 情報の流れが「見出し → 画像 → タイトル → 著者」の順で下に続く構造になっており、視線誘導がスムーズ。

2. Menuボタンの操作性

  • ヘッダー右上に配置された「Menu」ボタンは、親指で押しやすい位置とサイズに設計されている。
  • 画面下部に「Scroll →」という視線誘導のヒントがあり、操作を迷わせない工夫がされている。

3. 奥行きとリズム感のあるカード設計

カード要素に高低差(z-index)のある設計をすることで、単調になりがちなモバイルレイアウトに視覚的な動きが生まれている。

サムネイル画像に日付ラベルが重なり、さらにその下にピンクの背景で本文が展開される構造により、奥行きとリズム感が生まれている


“あえて”を卒業して“意図”を語ろう

「なんとなく良さそう」なデザインは、誰にでも作れます。
でも、「なぜそれが良いのか」を言葉にできる人は、再現性・伝達力・改善力が圧倒的に高いです。

“あえて”を卒業し、“意図”を言葉で伝えられるデザイナーへ。

この練習帳が、あなたの思考と言語の武器になることを願っています。まずは今日1サイト、観察→6項目記入をやってみましょう。


よくある質問(FAQ)

Q. デザインの言語化とは何ですか?

デザインの良さや意図を論理的に説明するスキルです。「なんとなく良い」ではなく、「視線誘導のためにコントラストを強調している」「Z型の視線移動に合わせてCTAを配置している」のように、デザイン判断の根拠を言葉で表現することです。

Q. デザインの言語化はなぜ重要ですか?

クライアントやチームに意図を正確に伝えるために不可欠だからです。論理的に説明できると修正指示の精度が上がり、自分のデザイン判断の再現性も高まります。「感覚」に頼るデザインはブレやすいですが、言語化できると一貫した品質を保てます。

Q. デザインの言語化を鍛える練習方法は?

毎日1つWebサイトを選び、レイアウト・配色・タイポグラフィ・余白の4つの観点から「なぜこのデザインなのか」を200文字以上で書き出す練習が効果的です。本記事の「6つの観点」テンプレと「3題のトレーニング」を組み合わせると、見る目と語る力の両方が鍛えられます。

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