Webデザインの基礎は、読んで覚えた時点ではまだ使えるようになっていません。作り終えた画面に当てはめて「守れているかどうか」を1つずつ確かめたときに、はじめて手元の仕事に効く知識になります。ところが完成後の点検は、見る順番と合否の基準が決まっていないと、「なんとなく素人っぽい」「もう少し垢抜けさせたい」といった印象の言い合いで終わってしまいます。
Webデザインの基礎点検とは、完成した画面に出ている症状から疑うべき領域を逆引きし、その領域ごとに決まった合否ライン(数値)で合格・不合格を出す作業です。領域は「読める」「触れる・たどれる」「崩れない」「速い」の4つに整理でき、合否ラインの大半はW3CのWCAG 2.2とCore Web Vitalsという公開された基準から取れます。基準が外にあるので、判定が人によってぶれません。
この記事はその地図です。役割をはっきりさせておくと、何を・どの順で測るかだけを決め、どう測るか(開発者ツールの操作やコンソールで走らせるコード)は書きません。測り方は領域ごとの記事が持っているので、測る段になったらそちらへ渡します。合否ラインの根拠にはW3C勧告のWCAG 2.2(2024年12月12日勧告)、web.dev、Google検索セントラルを使い、いずれも2026年8月2日に原文を確認しています。
基礎が守れているかは、作ったあとに測って決まる
Webデザインの制作は、大きく「参考を集めて当たりを付ける」「数値を決める」「作る」「点検する」の順に進みます。このうち点検だけが、ほかの工程と決定的に違う性質を持っています。ほかの工程は自分の判断で正解を作りますが、点検は外にある基準に自分の画面を当てて、合否が向こうから返ってくる工程だからです。だから点検は最後に置くしかなく、そして最後に置くからこそ、前の工程で決めた数値がそのまま守られているかを確認できます。
| 工程 | そこで決まること | 本記事の担当 |
|---|---|---|
| 着手前(参考集め・ワイヤー) | 何を作るかの当たりと、共通構造の型 | 扱わない |
| カンプ前(数値を決める) | ウィンドウ幅・コンテンツ幅・カラム設計などの基準値 | 扱わない |
| 完成後(本記事) | 決めた基準と公開されている基準を満たしているか | 扱う |
| 測定の実作業 | 開発者ツールでの値の取り方と再現手順 | 各領域の記事へ渡す |
前工程にあたる「数値を決める」側は別記事が担当しています。ウィンドウ幅・コンテンツ幅・カラム設計といった土台の数字は、デザインカンプ前に決めるWebデザインのルールで先に固めてください。この記事はその数字を決める側ではなく、決まった数字が守られているかを測る側です。逆に言えば、基準値を決めないまま点検に入ると「何と比べて不合格なのか」が言えなくなります。
点検にはもう1つ、数値では出せない側面があります。「情報の優先順位が、装飾ではなく構造に載っているか」です。こちらは色を剥ぐ・ぼかす・強弱を剥ぐという主観テストで確かめる領域で、UIデザインの構造・視覚・文字を剥ぎ取りテストで検品するが担当しています。同じ「完成後の点検」でも、あちらは順位が読み取れるかという主観判定、この記事は数値の合否ラインという分担です。両方を通してはじめて点検が一巡します。
なお、構図・配色・作業効率化までを含めたデザイン全体の入口は デザインガイド にまとめてあります。この記事はその下にある「基礎の点検」だけを担当する枝です。
症状から、疑う領域を引く
点検を「全部を上から見る」で始めると、たいてい途中で力尽きます。実務で先に手元にあるのは、レビューで言われた一言や自分が感じた違和感、つまり症状です。症状は領域と対応しているので、そこから逆に引けば、見る場所を最初から絞れます。
| 症状 | 疑う領域 | 最初に確かめる値 |
|---|---|---|
| なんとなく素人っぽい・情報が団子に見える | 文字組みと余白 | 行間・段落間の設定値と、要素間の余白の刻み |
| 文字が読みにくい・目が滑る | 文字と背景のコントラスト | コントラスト比 4.5:1 |
| 注釈や補助テキストだけ読み飛ばされる | 淡色テキストのコントラスト | コントラスト比 4.5:1 |
| ボタンかどうか分からないと言われる | UI部品の輪郭のコントラスト | 隣接色に対して 3:1 |
| 探しているものに行き着かない | ナビゲーションと到達手段 | 到達手段が2通り以上あるか/繰り返しナビの並び順 |
| キーボード操作で今どこにいるか分からない | フォーカス表示 | フォーカス枠が見えるか/固定要素に完全に隠れないか |
| スマートフォンで横に切れる・横スクロールが出る | 幅の耐性 | 幅320 CSSピクセル相当で2方向スクロールが出ないか |
| 文字を大きくすると崩れる | 拡大の耐性 | 200%拡大で内容と機能が落ちないか |
| 押しにくい・誤タップされる | ターゲットサイズ | 24×24 CSSピクセル |
| 重い・読み込み中に要素が飛ぶ | 表示性能 | LCP 2.5秒/INP 200ミリ秒/CLS 0.1 |
領域が決まったら、次は2つに分かれます。合否を出すだけなら、この記事の次章以降の合否ラインで足ります。不合格だった領域を作り直す、あるいは値の取り方そのものを知りたい場合は、領域ごとの記事へ進んでください。この記事から先の深掘り先は次のとおりです。
- 文字組み(行間・字送り・見出しと本文の比)を数値で決め直す — タイポグラフィの基本とデザイン活用術
- 配色そのものを組み直す・パレットを作る — 色彩設計の基本|配色理論とカラーパレット実装例
- 余白が足りているか、詰まりの原因はどこかを見る — Webデザインにおけるホワイトスペースの重要性と活用方法
- 並びが崩れているときにグリッドを組み直す — グリッドレイアウトの基本と組み方
- 画面幅ごとの切り替えを作り直す — レスポンシブデザイン入門|スマホ対応の基本原則
- タップ領域・コントラスト・320px幅を実際に測る手順を知る — UIの合否を数値で出す|タップ領域・コントラスト・320px幅の実測手順
- 到達できるか・今どこにいるかが分かるかを測る — ナビゲーションの作り方と最適化
- WCAG 2.2の全体像と、自動チェックで拾えない範囲を押さえる — Webアクセシビリティの基本|WCAG 2.2と法改正への対応
- 指標そのものの定義と目標値、下げ方を知る — Core Web Vitalsの改善ガイド
- 転送圧縮・キャッシュ・HTTP/2・画像フォーマットの配信設定が現行水準かを1回のリクエストで判定する — サイト高速化の配信設定点検
「読める」の合否ライン
最初に見るのは「読めるか」です。読めない画面は、ほかの領域が全部合格でも使えません。ここでの合否ラインは、W3CのWeb Content Accessibility Guidelines (WCAG) 2.2(W3C勧告、2024年12月12日/2026年8月2日に原文確認)のレベルAAから取ります。
| 対象 | 合否ライン | 根拠(WCAG 2.2・レベルAA) |
|---|---|---|
| 本文テキストと背景 | コントラスト比 4.5:1 以上 | 達成基準 1.4.3 Contrast (Minimum) |
| 大きな文字と背景 | コントラスト比 3:1 以上 | 達成基準 1.4.3(大きな文字=18ポイント以上、または太字14ポイント以上) |
| 行間1.5倍・段落間2倍・字間0.12倍・語間0.16倍を外から当てた状態 | 内容と機能が失われない | 達成基準 1.4.12 Text Spacing |
1.4.3の原文は「The visual presentation of text and images of text has a contrast ratio of at least 4.5:1」で、例外は大きな文字・付随的なテキスト・ロゴタイプの3つです。大きな文字の定義は「18ポイント以上、または14ポイントの太字、あるいは日本語・中国語・韓国語のフォントで同等の大きさになるサイズ」と明記されています。ポイント指定で書かれている点に注意してください。CSSのpxとポイントは同じ単位ではないため、境界に近いサイズでは「大きな文字扱いにできるか」を確かめてから3:1を当てる必要があります。迷ったら4.5:1で判定するほうが安全です。
1.4.12は誤解されやすい基準です。「行間を1.5倍にしなさい」という要求ではありません。原文は「No loss of content or functionality occurs by setting line height to 1.5 times the font size…」で、読者側がその値を上書きしたときに壊れないことを求めています。つまり判定対象はデザインの好みではなく、高さを固定した箱に文字を詰めていないかです。落ちる場合はほぼ確実に、固定高さのボタンやカードが原因になります。
コントラストで落ちたときの直し方は2通りあります。その色だけを濃くする対症療法か、配色の設計に戻るかです。淡色の注釈や薄いグレーのプレースホルダーが複数箇所で落ちているなら、個別に濃くしても再発します。パレットの段階から組み直す話は 色彩設計の基本 に、行間や見出しと本文の比を数値で決め直す話は タイポグラフィの基本とデザイン活用術 にあります。
本文の最小フォントサイズは合否ラインに入れない
「本文は16px以上」という決まりを見かけますが、WCAG 2.2に本文の最小フォントサイズを定めた達成基準はありません。2026年8月2日にWCAG 2.2の原文を確認した範囲でも、文字サイズに関する要求は1.4.4 Resize Text(200%まで拡大できること)であり、絶対値の下限ではありませんでした。16pxという数字自体は実務上の妥当な習慣ですが、根拠はアクセシビリティ標準ではなく別のところにあります。ここでは公的な基準に紐づく項目だけを合否ラインとして扱い、実務上の推奨値は前工程(カンプ前に決める数値)の側に置きます。この線を引いておかないと、「基準違反」と「好みの相違」が混ざり、レビューで話が通らなくなります。
「触れる・たどれる」の合否ライン
読めることを確認したら、次は操作と移動です。ここは見た目のスクリーンショットでは合否が出ない領域で、実際に指で押す、キーボードで送る、別のページから戻ってくるといった動きを伴います。合否ラインは同じくWCAG 2.2のレベルAAです。
| 対象 | 合否ライン | 根拠(WCAG 2.2・レベルAA) |
|---|---|---|
| ポインタ操作のターゲット | 24×24 CSSピクセル以上(例外あり) | 達成基準 2.5.8 Target Size (Minimum)/2.2の新規基準 |
| UI部品や図形の、識別に必要な部分 | 隣接色に対してコントラスト比 3:1 以上 | 達成基準 1.4.11 Non-text Contrast |
| キーボードフォーカス | フォーカス位置が見えるモードがある | 達成基準 2.4.7 Focus Visible |
| フォーカスを受けた部品 | 作者側のコンテンツで完全には隠れない | 達成基準 2.4.11 Focus Not Obscured (Minimum)/2.2の新規基準 |
| そのページへの到達手段 | 2通り以上ある(プロセスの途中を除く) | 達成基準 2.4.5 Multiple Ways |
| 複数ページで繰り返されるナビゲーション | 毎回同じ相対順序で現れる | 達成基準 3.2.3 Consistent Navigation |
2.5.8には5つの例外が明記されています。間隔(24 CSSピクセル径の円を各ターゲットの中心に置いても他のターゲットと重ならない)、等価(同じ機能を果たす別のコントロールが基準を満たしている)、インライン(文中にあり、行の高さに制約される)、ユーザーエージェント制御(作者が変更していない)、必須(その表示が本質的、または法的に要求される)の5つです。小さなアイコンボタンを並べた行が落ちたとき、サイズを上げる以外に「間隔を空ける」「同機能のテキストリンクを近くに置く」という選択肢がある、と読める点が実務では効きます。
2.4.11は見落としやすい基準です。フォーカス枠を用意していても、画面上部に固定したヘッダーの裏にフォーカス中の要素が潜り込むと落ちます。キーボードでタブを送りながらページの上端・下端を往復するだけで見つかるので、点検の順番に必ず入れてください。到達手段(2.4.5)と繰り返しナビの順序(3.2.3)は1ページだけでは判定できず、サイト単位で見る必要があります。
ここで落ちた領域を作り直すなら、到達性と現在地の設計は ナビゲーションの作り方と最適化 が担当しています。そして「実際にどうやって24×24やコントラスト比を取るのか」という測り方は、この記事では扱いません。その手順は UIの合否を数値で出す(タップ領域・コントラスト・320px幅の実測手順) にまとめてあるので、合否を出す段になったらそちらへ移ってください。
「崩れない・速い」の合否ライン
3つ目は、環境を変えたときに壊れないかどうかです。ここも基準は外にあります。幅と拡大はWCAG 2.2、表示性能はCore Web Vitalsです。
| 対象 | 合否ライン | 根拠(WCAG 2.2・レベルAA) |
|---|---|---|
| 縦スクロールのコンテンツ | 幅320 CSSピクセル相当で2方向スクロールを要求しない | 達成基準 1.4.10 Reflow |
| 横スクロールのコンテンツ | 高さ256 CSSピクセル相当で2方向スクロールを要求しない | 達成基準 1.4.10 Reflow |
| テキストの拡大 | 200%まで拡大しても内容・機能が失われない | 達成基準 1.4.4 Resize Text |
1.4.10には「320 CSS pixels is equivalent to a starting viewport width of 1280 CSS pixels wide at 400% zoom.」という注記が付いています。320という数字は特定の端末の実寸ではなく、拡大の限界を幅に換算した値だということです。だから「うちの想定端末はもっと広いので関係ない」とは言えません。二次元スクロールが必要になる部分(大きなデータ表や地図など、レイアウトそのものに意味がある要素)は例外として認められているので、表が横に伸びること自体を不合格にする必要はありません。
| 指標 | 合否ライン | 何がずれているサイン |
|---|---|---|
| LCP(Largest Contentful Paint) | 2.5秒以内 | 主役の画像や見出しが出るまで待たされる |
| INP(Interaction to Next Paint) | 200ミリ秒以内 | 押しても反応が返るまで間が空く |
| CLS(Cumulative Layout Shift) | 0.1以下 | 読み込み中に要素が飛び、押し間違える |
数値の出典は web.dev「Web Vitals」(2026年8月2日確認)です。判定の作法まで含めて押さえておくべき点が2つあります。1つは75パーセンタイルで見ること。原文は「a good threshold to measure is the 75th percentile of page loads, segmented across mobile and desktop devices」で、平均でも自分の端末の1回でもありません。もう1つはモバイルとデスクトップを分けて見ることです。1回の計測で「速い」と判断するのは、この基準の使い方から外れています。
指標名にも注意が必要です。応答性の指標は2024年3月12日にFID(First Input Delay)からINPへ置き換わっています。web.dev「Interaction to Next Paint (INP) becomes a Core Web Vital」(2024年3月12日/2026年8月2日確認)は「Interaction to Next Paint (INP) is now a stable Core Web Vital metric, replacing First Input Delay (FID).」と明記しています。古い解説記事にはFIDのまま残っているものがあるので、点検シートに写すときは指標名を確認してください。
検索順位との関係は、言い方を正確にしておく必要があります。Google検索セントラルの「Understanding page experience in Google Search results」(最終更新2025年12月10日/2026年8月2日に英語版を確認)は、「There is no single signal.(単一のシグナルは存在しない)」と述べたうえで、「Core Web Vitals are used by our ranking systems.(Core Web Vitalsはランキングシステムで使われている)」としています。「速くすればSEOに効く」という粗い因果ではなく、「Core Web Vitalsはランキングシステムが見ている複数のシグナルの1つである」までが公式の記述です。点検の目的は順位ではなく、待たされる・飛ぶ・反応しないという体験上の不具合をなくすことに置いてください。
ここで落ちたときの進み先は2つに分かれます。指標そのものの定義と下げ方を追うなら Core Web Vitalsの改善ガイド、転送圧縮・キャッシュ・HTTPのバージョン・画像フォーマットといった配信側の設定が現行水準かを1回のリクエストで判定するなら サイト高速化の配信設定点検 です。幅320 CSSピクセル相当での確認手順そのものは UIの合否を数値で出す にあります。
15分で1ページを通す点検の回し方
合否ラインが揃ったら、あとは順番です。順番には理由があります。前の領域の修正が後の領域を壊すことはあっても、その逆は起きにくいからです。たとえばコントラストを上げるために背景を濃くすると、その上に載っているボタンの輪郭が3:1を割ることがあります。読める→たどれる→崩れない→速い、の順に進めると、この巻き添えを後段で拾えます。
- 点検する幅と倍率を先に固定する(例: 幅1280・ズーム100%を基準、幅320相当と200%拡大を別条件として用意)
- 読める — 本文・見出し・注釈・プレースホルダーのコントラスト比を確認し、外から行間と字間を当てても崩れないかを見る
- たどれる — キーボードだけで上端から下端までタブを送り、フォーカスが見えるか、固定要素に隠れないかを見る
- 触れる — 主要な操作対象のサイズと間隔、UI部品の輪郭のコントラストを確認する
- 崩れない — 幅320 CSSピクセル相当と200%拡大の2条件で、2方向スクロールと機能欠落が出ないかを見る
- 速い — LCP・INP・CLSの3つを、モバイルとデスクトップを分けて確認する
- 落ちた領域だけを記録し、その場では直さない
最後の1行が肝心です。見つけたその場で直し始めると、点検が中断して残りの領域が見られなくなります。1ページを通すのに15分と決めておくと、直す作業と測る作業が混ざりません。1周目は「どこが落ちているか」の地図を作るだけに徹してください。
記録は3列でとる
記録が長くなると次の周で使えません。列は3つに固定します。次の周で同じ形に書き直し、並べて見比べられるようにするためです。
| 領域 | 判定 | 落ちた箇所(1行) |
|---|---|---|
| 読める(コントラスト・文字組み) | 不合格 | フォームの補助テキストが4.5:1を割っている |
| たどれる(フォーカス・到達) | 不合格 | 固定ヘッダーに最初のリンクのフォーカスが隠れる |
| 触れる(サイズ・輪郭) | 合格 | — |
| 崩れない(幅・拡大) | 合格 | — |
| 速い(LCP・INP・CLS) | 未測定 | 実測データが揃っていない |
判定は「合格/不合格/未測定」の3つだけにします。「たぶん大丈夫」を書けるようにすると、次の周で比較できなくなるからです。実測できていない項目は空欄にせず「未測定」と書いてください。空欄は合格と読み違えられます。
「読める」が不合格で、原因が個別の色ではなく詰まりや並びの乱れにあるときは、余白と並びの側から直したほうが早いことがあります。余白の判断は ホワイトスペースの重要性と活用方法、並びの組み直しは グリッドレイアウトの基本と組み方 にあります。手を動かす段では CSS Gridジェネレーター と Flexboxジェネレーター で当たりを取ると、値を1つずつ書き換えるより早く候補を比べられます。
検証|直したあと、同じ順でもう一度回す
点検が効いたかどうかは、直した本人の感触では分かりません。確かめ方は1つです。直す前に作った点検シートと同じ順序・同じ条件で、もう一度だけ全領域を回します。1周目と2周目のシートを並べ、次の2つが同時に成り立てば合格です。
- 2周目で「不合格」の領域が0になっている
- 直していない領域の判定が、1周目から1つも変わっていない
1つ目だけでは足りません。2つ目が「修正が別の領域を壊していないこと」を担保しています。コントラストのために色を濃くしたらUI部品の輪郭が3:1を割った、という巻き添えは、直した領域だけを見返しても見つかりません。外れたときは、外れ方によって次の一手が変わります。
| 2周目の外れ方 | 考えられる原因 | 次の一手 |
|---|---|---|
| 直していない領域が新しく不合格になった | その修正が別領域を壊している | 修正をいったん戻し、1領域ずつやり直す |
| 同じ領域が2周とも不合格のまま | 合否ラインの当て方がずれている | その領域の実測手順に従って値を取り直す |
| 1周目と2周目で判定が食い違う | 測定条件(幅・倍率・端末)が固定できていない | 条件を固定し直してから、もう一度2周する |
| 「未測定」が残ったまま2周が終わった | その領域は判定していない | 合格として扱わず、未測定のまま次工程へ申し送る |
検証は2周で止めます。「測り方そのものが妥当だったのか」を検証する3周目は、この記事では扱いません。そこから先は各領域の実測手順が持っている話であり、地図の役割を超えます。自動チェックツールの限界を含めた全体像は Webアクセシビリティの基本 にまとまっているので、判定そのものに疑いが残った場合はそちらを起点にしてください。
やりがちな失敗と、その直し方
点検が形だけになるパターンは限られています。多くは「基準を外に置く」という前提が崩れたときに起きます。
| やりがちな失敗 | 何が起きるか | 直し方 |
|---|---|---|
| 印象で合否を決める | レビューのたびに結論が変わり、直し終わりが来ない | 合否は数値だけで出し、印象は別枠のメモに分ける |
| 自動チェックの結果だけで終える | フォーカスの見え方やナビの一貫性が丸ごと抜ける | 自動チェックのあとにキーボード操作の確認を必ず足す |
| 全領域を同時に直す | どの修正が何を壊したか分からなくなる | 1領域ずつ直し、そのつど2周目を回す |
| 合否ラインを自分で作る | 基準が内側に移り、外部と話が通じなくなる | 達成基準の番号ごと記録し、原文にあたって確認する |
| 決める工程と測る工程を混ぜる | 好みの相違が「基準違反」として扱われる | 基準値の決定はカンプ前に済ませ、点検では動かさない |
もう1つ、点検の結論として起こりうるのが「部分的な修正では届かない」という判定です。落ちた領域が3つ以上あり、しかも原因がばらけているなら、直すより作り直したほうが早い場合があります。そのときは着手前の工程に戻ることになるので、参考サイトの集め方と共通構造の抜き出し方を扱った Webデザインの参考サイトの探し方と使い方 から入り直してください。点検の役割は「直す」ことではなく、「直すのか作り直すのかを、数値で決められるようにする」ことです。
よくある質問(FAQ)
Q. Webデザインの基礎は、どこから点検すればいいですか?
読めるか(コントラストと文字組み)から始めます。読めない画面は、ほかの領域が合格でも使えないためです。読める→たどれる→崩れない→速いの順に進めると、前の領域の修正が後の領域を壊していても、同じ1周のうちに気づけます。
Q. 文字と背景のコントラストは、どのくらいあれば合格ですか?
WCAG 2.2の達成基準1.4.3(レベルAA)では、テキストと背景のコントラスト比は4.5:1以上、大きな文字は3:1以上と定められています。ここでいう大きな文字とは18ポイント以上、または太字で14ポイント以上(日本語・中国語・韓国語のフォントでは同等の大きさになるサイズ)のことです。
Q. ボタンやリンクの大きさに基準はありますか?
WCAG 2.2で新設された達成基準2.5.8(レベルAA)が、ポインタ操作の対象を24×24 CSSピクセル以上と定めています。ただし十分な間隔が空いている場合、同じ機能を果たす別のコントロールがある場合、文中のインラインリンクである場合など、5つの例外が認められています。
Q. スマートフォンで崩れていないかは、どの幅で確認すればいいですか?
幅320 CSSピクセル相当で確認します。WCAG 2.2の達成基準1.4.10(Reflow)は、この幅で縦横2方向のスクロールを要求しないことを求めており、320 CSSピクセルは1280 CSSピクセル幅の表示領域を400%に拡大した状態と等価だと注記されています。
Q. 表示速度はデザインの合否に入りますか?
入ります。Core Web Vitalsの目安はLCPが2.5秒以内、INPが200ミリ秒以内、CLSが0.1以下で、75パーセンタイルで判定します。検索順位との関係についてGoogleは「単一のシグナルは存在しない」としたうえで、Core Web Vitalsをランキングシステムで使っていると公表しています。
Q. 自動チェックツールの結果だけで合否を決めてよいですか?
決められません。自動チェックが判定できるのは機械的に読み取れる項目に限られ、フォーカスの見え方やナビゲーションの一貫性のように、実際に操作しないと分からない項目が残ります。自動チェックで落ちた分を直したうえで、キーボード操作の確認を必ず併用してください。
Q. 点検のためにデザインツールは必要ですか?
点検そのものはブラウザだけで完結します。作り直しが必要になった場合、Figmaには無料のStarterプランがあり、限定機能ながらドラフトを無制限に作れます(Figma料金ページ/2026年8月2日確認)。コーディング側はVS Codeで足ります。
