Claude Codeでリリックビデオを作るとは、歌詞の文字・色・動きを日本語で指示し、Claudeに動画ツール「Tesseract」を動かしてもらって、パソコンの中で書き出すことです。After Effectsを開かなくても、文字が拍に合わせて入れ替わる8秒の縦動画を、1回の書き出し2.12秒で作れました。
リリックビデオの作り方を調べると、After Effectsのキーフレームを細かく打つ方法や、曲を入れるだけの自動生成サービスが多く出てきます。前者は覚えることが多く、後者は文字の見せ方を細かく決めにくいのが悩みどころです。
この記事では、2026年11月5日に実際に作った8秒の縦のリリックビデオをもとに、Tesseract 0.5.0の入れ方、詞・BGM・書体の用意、Claudeへの指示、言葉での直し、つまずいた点までを順に説明します。検証はM3のMacで行い、数字はすべて手元で測った値です。
完成したサンプル:8秒の縦のリリックビデオ
先に完成したものを見てください。音は最初は消してあります。再生ボタンの横の音のアイコンで音を出せます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 長さ・大きさ | 8秒・1080×1920(縦)・30fps |
| 詞(オリジナル) | 透明な朝に 名前をつけて/鼓動のまま 跳べ |
| 見せ方 | 0.5秒(1拍)ごとに歌詞のかたまりを入れ替える。生成りの白・黒・赤の3色だけ |
| BGM | Stable Audio 3で作った歌なしのポップ(120BPM) |
| 書体 | しっぽり明朝 B1 ExtraBold・Zen Kaku Gothic New Bold(どちらもSIL OFL 1.1) |
| 書き出しにかかった時間 | 2.12秒(最初の版)/2.10秒(直した後) |
絵や写真は使っていません。最初は水彩のイラストを背景に置いてみましたが、文字を主役にしたほうが歌詞が目に入るため、文字と単純な図形だけにしました。
Tesseractとは:AIエージェントのための動画ツール
Tesseract(テッセラクト)は、Mirage社が公開している、AIエージェントに動画を作らせるためのツールです。動画のレイヤー・キーフレーム・音を1つのプロジェクトにまとめて扱い、プレビューと書き出しをパソコンの中で行います(公式のGitHub)。
人が画面で操作するのではなく、Claude CodeのようなAIエージェントがスキル(使い方の手引き)を読み、コマンドを打って組み立てます。公式のREADMEに載っているスキルは次の4つです。
| スキル | 向いている作業 |
|---|---|
| Edit Video | 撮った映像を切る・構図を直す・会話と音楽を合わせる |
| Motion Graphics | タイトル・文字・図・重ねる素材を動かす(今回使ったのはこれ) |
| Editor | プレビューや編集用のブラウザの画面を作る |
| Design | ポスター・SNS画像などの静止画を作る |
手元で入れたところ、この4つに3D用のスキルを加えた5つが入りました。書き出しを行う本体(CLI)は tsrct というコマンドで、Node.jsがなくても動きます。対応しているのはmacOS・Windows・Linux(x86_64)です。
Tesseractの入れ方
スキルは1行のコマンドで入り、本体のCLIはスキルの手引きに沿って入れます。手元ではこの3つの手順で入れました。
- スキルを入れる(下のコマンド。この1行だけはNode.jsとnpmが要る)
- 本体のCLIを入れる。スキルの手引きどおりにClaudeに頼むか、公式のリリースから自分のパソコン用のZIPを落とす
- 利用状況の送信を止める(任意)
npx skills add mirage-hq/TesseractZIPを自分で落とした場合は、同じ場所にある .sha256 のファイルと値が一致するかを確かめてから使います。手元ではApple Silicon用(darwin-arm64)の値の一致と、Appleの公証が付いていることを確かめました。
shasum -a 256 tesseract-0.5.0-darwin-arm64.zip
cat tesseract-0.5.0-darwin-arm64.zip.sha256Tesseractには利用状況を送る機能があります。送りたくない場合は、次のコマンドで止められます。今の設定は tsrct telemetry status で確かめられます。
tsrct telemetry disable手順1:詞と見せ方を決める
最初に決めるのは、詞と「どの拍で何を出すか」です。ここが決まると、あとはClaudeが拍の時刻を計算して組み立てます。
今回はClaudeに詞を3案出してもらい、短く言い切る案を選びました。全体を16拍(0.5秒×16=8秒)に分け、1拍ごとに歌詞のかたまりを入れ替えます。
| 決めたこと | 中身 |
|---|---|
| 色 | 生成りの白・黒・赤の3色だけ。かたまりごとに背景の色も入れ替える |
| 文字の出方 | 出る瞬間は118%の大きさから100%へ0.14秒で縮む |
| 強調 | 「鼓動」の2拍目は112%まで脈打つ。赤い線は0.26秒で左から伸びる |
| 質感 | 画面全体に粒子(grain)を量6でかける |
言葉で伝えにくい見た目は、参考の画像を見せて「文字が主役で、短い間隔で入れ替わるもの」と頼むと伝わりやすくなります。
手順2:BGMを作って拍を測る
リリックビデオは文字の切り替えを拍に合わせるので、BGMを先に作り、拍の位置を測ります。今回はパソコンの中で動くStable Audio 3で、歌の入らない曲を作りました。
1回目は明るいポップを頼んだのに、落ち着いたジャズ寄りの曲になりました。2回目は指示に従う強さ(cfg)を1から4に上げ、避けたい雰囲気を打ち消しの指示(negative prompt)に入れたところ、暗さが消えました。
Energetic, bright and happy pop instrumental with bouncy electric piano chords, sparkling glockenspiel accents, plucky acoustic guitar, punchy bass and a driving four-on-the-floor beat with handclaps, uplifting sunny morning mood.
negative: slow, calm, relaxing, sad, melancholic, jazz, ambient, dark
(120BPM / 20秒 / cfg 4 / seed 3100〜3102 の3候補から 3101 を採用)できた曲は0〜8.3秒に切り、最初に0.1秒・最後に0.7秒の音量の立ち上げと消え際を付け、音の大きさを-14 LUFSにそろえました。拍は次のコマンドで測り、120.1BPM・最初の拍が0.045秒と出ました。
npx hyperframes beats bgm-8s.wav --json測った値は組み立て用のスクリプトにそのまま書き、拍の番号から時刻を計算します。
FIRST_BEAT_MS, BEAT_MS = 45, 60000 / 120.1
def beat_ms(b):
return round(FIRST_BEAT_MS + b * BEAT_MS) if b else 0手順3:書体を用意する
書体は、書き出しの時にTesseractが名前で探せる形にしてから読み込みます。今回は歌詞にしっぽり明朝 B1 ExtraBold、英語の訳と番号にZen Kaku Gothic New Boldを使いました。どちらもSIL Open Font License 1.1の書体なので、動画に使って公開できます。
しっぽり明朝 B1 ExtraBoldは、元の名前のままだと書き出しが止まりました(理由は「つまずいた点」で説明します)。名前を「LyricMincho」に付け直した複製を作って読み込むと通りました。Zen Kaku Gothic New Boldはそのままで通りました。
手順4:Claudeに指示して書き出す
Claudeには、作りたい動画の形と中身を日本語で渡します。今回の最初の指示を要約すると、次の内容です。
縦 1080×1920・30fps・15〜20秒。オリジナルの短い詞(4〜6行・明るく前向き)を、BGM に合わせて1行ずつ文字アニメで出すリリックビデオ風。BGM は Audio Studio で作る歌なしの明るいポップ。最初の版を作るまでに、参考の画像を見せて「フォントが主役」「短い間隔で入れ替える」「全部で8秒くらい」と言葉を足し、詞も選び直しました。冒頭で紹介した8秒・2行の形は、こうして決まったものです。
Claudeはスキルを読み、組み立て用のPythonのスクリプトを書いて tsrct を順に動かしました。流れは次のとおりです。
tsrct project createでプロジェクト(.tsrctのファイル)を作るtsrct project import-assetでBGMを、tsrct project import-fontで書体を読み込む- 歌詞のかたまり・色・動き・粒子を、まとめた指示のファイルにして
tsrct project applyで反映する tsrct exportでMP4に書き出す
歌詞のかたまりは、スクリプトの中の1つの表だけで決めています。表を書き換えれば、時刻は拍から計算し直されます。
# (開始の拍, 拍の数, 文字, 文字の大きさ, 文字の色, 背景の色, 縦の位置, 寄せ方, 赤い線を引くか)
CHUNKS = [
(0, 1, "透明な", 300, INK, PAPER, 560, "left", False),
(1, 1, "朝に", 360, INK, PAPER, 1020, "right", False),
(2, 1, "朝", 900, RED, INK, 420, "center", False),
# 「跳べ」まで、全部で13のかたまり
]8秒・1080×1920・30fpsの書き出しにかかった時間は、M3のMacで2.12秒でした。文字と図形だけの動画なら、書き出しを待つ時間はほとんどありません。
手順5:言葉で直す
見た目の直しも日本語で頼めます。最初の版を見て、指示したのは次の1文だけです。
赤をもっと増やしてClaudeは、背景を赤にするかたまりを1つから4つに増やし(文字は白)、「透明な」「鼓動のまま」の文字を赤にし、終わりの画面も赤地に白へ変えました。直しの中身は別のファイルにまとめ、同じスクリプトに渡して書き出し直します。
{
"_instruction": "赤をもっと増やして",
"recolor": {
"0": ["RED", "PAPER"],
"3": ["PAPER", "RED"],
"8": ["PAPER", "RED"],
"9": ["RED", "PAPER"],
"12": ["PAPER", "RED"]
},
"end": ["RED", "PAPER"]
}8秒の全コマで赤い部分が占める割合を測ると、7.4%から36.4%に増えていました。直した後の書き出しは2.10秒です。左が直す前、右が直した後です。

1回目の直しでは「跳べ」だけが赤くなりませんでした。かたまりの番号を1つずれて指定していたためで、番号を直して書き出し直しました。直した後は、変えたいかたまりのコマを1枚出して確かめると、見落としに早く気づけます。
つまずいた点と直し方
書き出しが止まる原因は、ほとんどが書体でした。どれも手元の0.5.0で書き出したときに起きたことです。
名前に太さが入った書体で書き出しが止まる
しっぽり明朝 B1 ExtraBoldやヒラギノのW6のように、書体の名前に太さが入っていると、書き出しで strict font resolution failed と出て止まりました。書体の名前を付け直した複製を読み込むと通ります。
ヒラギノのようなTTCの書体はそのまま使えない
複数の書体を1つにまとめたTTCのファイルも、手元の0.5.0ではそのままだと同じ表示が出て書き出しが止まりました。1つの書体だけを取り出し、名前を付け直したOTFにすると通りました。
文字が箱の幅より大きいと勝手に折り返す
文字を置く箱の幅より文字が大きいと、意図しない所で折り返されます。まん中に寄せる文字は、箱を画面いっぱいの幅にしておくと崩れません。
拡大と位置は縦横を別々に指定する
大きさは scaleX と scaleY、位置は positionX と positionY を別々に指定します。脈打つ動きを付けるときも、2つに同じキーフレームを打ちます。
粒子の量は6くらいにする
粒子(grain)の amount は6程度でちょうどよい質感になりました。35まで上げたときは、砂嵐のような画面になりました。
向き不向き:BlenderやAfter Effectsとの使い分け
文字や平面の動きを手早く作るならTesseract、現実感のある3DならBlenderが向いています。同じ「濡れた路面にネオンが映る夜の路地」(3秒・1080×1920)を両方で作って比べました。
| Tesseract 0.5.0 | Blender(Cycles) | |
|---|---|---|
| 書き出しの時間 | 約12分(707秒・計算回数32) | 約10分(610秒・計算回数8+ノイズ除去) |
| 作り込み | 路面の質感に4回の作り直しが要った | 路面のツヤのムラで濡れた感じが出た |
| 見た目の判断 | 路面が均一な鏡になり、作り物っぽい | こちらのほうが現実感がある |
Blenderは、計算回数32のままだと約28分かかりました。計算回数を8に下げてノイズ除去に任せると、ちらつきは目で分からないまま約10分に縮み、見た目でも現実感のある方と判断しました。一方、今回のような文字と図形の8秒の動画は、書き出しが2秒ほどで終わり、直しも言葉1文で済みました。Blenderで3Dを作ってWebに載せる方法はClaude CodeでBlenderを動かしWebに載せるで説明しています。
After Effectsを持っていて、テロップを大量に書き出したい場合は、Claude CodeでAfter Effectsを自動化する方法も選べます。映像そのものを生成AIに作らせたい場合はAIでMV・CMを作る方法、動画にナレーションを付けたい場合はVOICEVOXでナレーションを自動で入れる方法が参考になります。
商用利用の条件
Tesseractは無料で使えますが、年商100万ドル以上の事業が仕事で使う場合は、Mirage社との別の契約が要ります。2026年11月5日にTesseractの利用規約で確かめた内容は次のとおりです。
- 個人・教育・仕事での利用を認めているが、商用の利用は年商による条件の対象になる
- 前の12か月の売上(グループ会社を含む)が100万ドル以上の営利の事業は、別の契約なしに商用で使えない
- 依頼された仕事は、仕事を引き受けた事業と依頼した事業の年商で判断する(作業に使った個人のアカウントではない)
- 勤め先や依頼主と関係のない個人の制作は、この条件の対象外
BGMに使ったStable Audio 3と書体にもそれぞれ条件があります。Stable Audio 3も年商100万ドル未満なら商用で使え(商用で使うときはStability AIへの登録が要る・Stability AIのライセンス)、書体はSIL Open Font License 1.1です。規約は変わることがあるので、使う前にそれぞれの最新版を確かめてください。
よくある質問
Claude CodeとTesseractでリリックビデオを作るときに、よくある質問をまとめました。
Q. Tesseractは無料ですか?
無料で使えます。ただし、年商100万ドル以上の事業が商用で使う場合は、Mirage社との別の契約が必要です。依頼された仕事は、仕事を引き受けた事業と依頼した事業の年商で判断します。
Q. Claude Code以外のAIでも使えますか?
使えます。公式のREADMEでは、ファイルの読み書きとコマンドの実行ができるAIエージェントで使えるとしており、ChatGPT・Codex用のプラグインもあります。Claude Code用のプラグインは2026年11月5日の時点で「近日公開」で、今回はスキルを入れて使いました。
Q. 歌の入った曲でもリリックビデオは作れますか?
曲は音声ファイルとして読み込めるので、拍を測れば同じ手順で組み立てられます。今回は歌の入らないBGMで確かめました。歌入りの曲を使う場合は、曲の権利を持っているかを先に確かめてください。
Q. Windowsでも作れますか?
公式のREADMEではmacOS・Windows・Linux(x86_64)に対応しています。この記事の手順と書き出し時間は、M3のMacで確かめたものです。
Q. 書き出しで strict font resolution failed と出たらどうすればいいですか?
書体の名前に太さが入っているか、TTCのファイルを使っていないかを確かめてください。1つの書体だけを取り出し、名前を付け直した複製を読み込むと通りました。
Q. After Effectsで作るのと比べて何が違いますか?
Tesseractは画面を操作せず、Claudeへの日本語の指示とスクリプトで組み立てます。歌詞や色の表を書き換えれば同じ形の動画を作り直せるので、何本も作るときや直しを繰り返すときに向いています。
