決済ブランドのロゴは、実際に契約しているブランドのものだけを、公式配布のマークで、改変せずに掲載できます。「対応予定だから」「よく見るデザインだから」と未契約ブランドのロゴを並べることは、規約違反として明文で禁止されています。
ECサイトの決済ページやフッターに並ぶVisa・Mastercard・JCB・PayPayのマーク。どのサイトにもあるパーツなのに、「どこから入手するのが正規ルートか」「どこまで加工していいか」を規約ベースで説明できる制作者は多くありません。素材サイトから拾ったロゴをトーン調整して並べる——これで複数の規約に同時に抵触しているケースが実際にあります。
この記事では、Visa・Mastercard・JCB・PayPayの各公式規定を直接確認し、入手先・掲載条件・改変禁止の中身をブランド別に整理します。カート選定や構築費用の話ではなく、「ロゴ掲載の規約」に絞った内容です。
結論|公式マークのみ・契約ブランドのみ・改変禁止
4ブランドの規定はそれぞれ別の文書ですが、共通する原則は3つに集約できます。
- 公式配布のマークだけを使う|素材サイトや他サイトからの流用ではなく、各社の公式配布データを使います。
- 契約しているブランドだけを表示する|未契約ブランドのロゴ掲載は禁止と明文化されています。
- 改変しない|色・比率・要素の変更、回転、縁取りなどはどのブランドも禁止です。サイズ変更は縦横比固定の拡大縮小のみ認められます。
この構図は、公式アセットの無改変使用を求めるSNSロゴやストアバッジと同じです。ブランド資産の扱い全般はSNSロゴをホームページに掲載する前に必ず確認すべきことで横断的に整理しています。
アクセプタンスマークとは|「使える決済」を示す公式マーク
決済ページに並べるマークには正式な呼び名があります。アクセプタンスマーク(Acceptance Mark)=「この決済手段が使える」ことを示すための表示用マークです。たとえばMastercardでは、ブランドロゴから「Mastercard」の文字を除いた2つの円のシンボルを、受け入れ表示に使う場合にアクセプタンスマークと呼ぶと定義しています。
つまり各社が配布しているのは「広告用の自由素材」ではなく、加盟店が受入表示のために使う規約付きの部品です。「デザインの一部」ではなく「決済機能の案内表示」として扱う——この位置づけを押さえると、後述の細かいルールがすべて腑に落ちます。
入手の実務|JCBの加盟店ロゴページが実質ハブになる
日本のEC事業者にとって実務上の起点になるのは、JCBの加盟店向けロゴダウンロードページです。JCB加盟店であれば、審査で利用可となった契約ブランドについて、JCBだけでなくAmerican Express・Diners Club・Discover・銀聯のクレジットブランド、QUICPayやiDなどの電子マネー、Smart Code・PayPay・d払い・楽天ペイなどのコード決済まで、Webサイト掲載用ロゴを一括で入手できます。
注意点は2つです。第一に、ダウンロードできるのは契約済みブランドのHP掲載用ロゴのみで、印刷物用データは加盟店デスクへの申請が必要です。第二に、ここで入手したロゴも「未契約ブランドの使用禁止・第三者への譲渡禁止・改変禁止」の条件付きです。入手が楽になるだけで、ルールが緩むわけではありません。
なお、どの決済手段を導入するか(カート・決済代行の選定や費用)の話はECサイト構築の費用比較ガイドで扱っています。この記事は「導入済みの決済をどう表示するか」の側です。
Visa|オンライン加盟店は掲載が「義務」
Visaは他社と少し毛色が違い、掲載が任意ではありません。VisaのPOSグラフィック規定は、Visaを受け入れるすべての物理店舗・オンライン店舗・ATMにVisa POSグラフィックの掲出を求めており、オンライン加盟店はホームページまたはチェックアウトページへの掲載が対象です。「載せてもいい」ではなく「載せる」が基本線です。
- 入手先|Visaの加盟店向けブランドページからPNG・SVG・EPS・AI形式でダウンロードできます。
- 改変禁止|「Visa提供のアートワークのみを使用し、拡大縮小は可能だが、比率や要素をいかなる形でも変更してはならない」と規定されています。
- 並び順|複数ブランドと並べる場合、Visaを先頭に置くことが推奨されています(推奨であって義務ではありません)。
最小サイズ・余白の具体的な数値は、公開Webページには明記されておらず、加盟店向けにダウンロード提供される「Visa Digital Brand Requirements」(2024年4月改訂版)側の資料で確認する形になります。
Mastercard|受入ブランドのみ表示・最小45px
Mastercardのアクセプタンスマークは、同社のBrand Center(要ログインのダウンロードページ)からWeb・アプリ用のPNG/SVG、印刷用のEPS/AIを入手します。表示できるのは実際に受け入れているブランドのマークのみという条件も明記されています。
数値規定は、画面表示の最小サイズが45px、クリアスペースがシンボル内の円1つの幅の1/4以上とされています。ただしこの数値はBrand Center内の記載であり、一般公開ページでは確認できないため、掲載前に加盟店アカウントでBrand Centerの現行値を確認することをおすすめします(本記事の値は2026年7月時点の調査によるものです)。
JCB系ロゴ|同サイズで並べる・回転も禁止
JCBの加盟店ロゴページには、ダウンロード後の使用条件が具体的に書かれています。ECの実装に直結するのは次の4点です。
- 改変の全面禁止|天地左右の比率・デザイン・色・文字の変更や回転はすべて不可。認められるのは縦横比を固定したサイズ変更だけです。
- 複数ロゴは同じ大きさで|複数ブランドを並べる場合、全ロゴを同じ大きさに揃えることが求められます。
- ブランド別の余白規定|たとえばiDは他要素との間にロゴ横幅の1/10以上、Smart Codeはシンボル縦幅の0.4倍の余白を四方に確保します。
- 文中使用の禁止|ロゴ画像を見出しや文章の中に埋め込む使い方は不可です。
「同じ大きさで並べる」は見落としがちなルールです。デザイン上の強弱をつけたくても、決済マークの列では特定ブランドだけ大きくしない——これが規約側の要求です。
PayPay|最小サイズが数値で明快・「ペイペイ」表記は禁止
PayPayは公式ブランドガイドライン(2024年12月版PDF)を公開しており、数値規定が4社の中で最も明快です。
| ロゴ種類 | 用途 | 最小サイズ(デジタル) | 最小サイズ(印刷) |
|---|---|---|---|
| ブランドロゴ1(横組み) | プライマリ | 高さ12px | 高さ5mm |
| ブランドロゴ2(縦組み) | プライマリ | 高さ20px | 高さ10mm |
| ブランドロゴ3(角型) | ロゴ2が高さ20px以下になる場面のアクセプタンスマーク | 高さ12px | 高さ5mm |
クリアスペースはロゴ1・2で上下左右にロゴ高さの1/3、禁止事項は「斜め配置・変形・縦配置・一部使用・重ね配置・文章内配置・縁取り」などが図解付きで列挙されています。そしてPayPay特有のルールが表記です。ブランド名の和文表記は不可で、「ペイペイ」「ぺいぺい」という表記は利用禁止。テキストで書くときも欧文の「PayPay」だけが正解です。
4ブランド比較|数値と特徴まとめ
| ブランド | 入手先 | 最小サイズ(画面) | クリアスペース | 特徴的なルール |
|---|---|---|---|---|
| Visa | 加盟店向けブランドページ | DL資料で確認 | DL資料で確認 | オンライン加盟店は掲載義務・先頭配置推奨 |
| Mastercard | Brand Center(要ログイン) | 45px | 円1つの幅の1/4 | 受入ブランドのみ表示 |
| JCB系 | 加盟店ロゴページ(多ブランド一括) | ブランド別 | ブランド別(iD=横幅1/10等) | 複数ロゴは同サイズ・回転禁止 |
| PayPay | 公式ガイドラインPDF | 12px/20px | ロゴ高さの1/3 | 「ペイペイ」表記禁止 |
ブランドごとに数値はバラバラですが、「公式配布・契約ブランドのみ・無改変」の3原則だけはどこでも共通です。個別数値は実装時にこの表と各公式ページで確認してください。
よくある違反パターン|決済ページで踏みやすい地雷
| やりがちな実装 | 判定 | 抵触する規定 |
|---|---|---|
| 未契約ブランドのロゴも「見栄え」で並べる | NG | 未契約ブランドの使用禁止(JCB明文)・受入ブランドのみ表示(Mastercard) |
| 素材サイト配布のカードブランドアイコンを使う | NG | 公式配布アートワークのみ(各社共通) |
| モノトーンのデザインに合わせてロゴをグレー化 | NG | 色変更の禁止(各社共通) |
| 自社ブランドだけ大きく、他は小さく並べる | NG | 複数ロゴは同じ大きさ(JCB) |
| キャンペーンバナーの文中にロゴ画像を埋め込む | NG | 文章内配置の禁止(JCB・PayPay) |
| 「ペイペイ使えます」とカタカナで表記 | NG | 和文表記の禁止(PayPay) |
| 契約ブランドの公式ロゴを同サイズ・無改変で並べる | OK | 各社規定の範囲内 |
とくに未契約ブランドの掲載は、「うちは使えると誤認させる表示」なのでユーザーへの実害も伴います。決済ページの実装前に、契約ブランドの一覧を発注者に確認する工程を必ず挟んでください。
よくある質問
Q. 導入予定のブランドのロゴを先に載せておいてもいいですか?
できません。表示できるのは実際に契約し受け入れているブランドのマークだけで、未契約ブランドのロゴ使用はJCBが明文で禁止し、Mastercardも受入ブランドのみの表示を条件にしています。導入が完了してから掲載してください。
Q. 決済ブランドのロゴはどこから入手するのが正解ですか?
各社の公式配布ページからです。日本のEC事業者ならJCBの加盟店ロゴページが起点として便利で、契約ブランドのWebサイト掲載用ロゴを複数ブランドまとめて入手できます。VisaとMastercardは各社のブランドページ、PayPayは公式ブランドガイドラインPDFが正規ルートです。素材サイトのアイコンは公式配布物ではないため使えません。
Q. ロゴの色をサイトのデザインに合わせて変えられますか?
変えられません。色・比率・デザイン・文字の変更や回転は各社とも禁止しており、認められるのは縦横比を固定した拡大縮小だけです。モノトーンのデザインに合わせたグレースケール化も改変にあたります。デザインの調整はロゴではなく周囲のレイアウトで行ってください。
Q. 複数のブランドを並べるときの順番やサイズに決まりはありますか?
サイズはJCBが「全ロゴを同じ大きさに揃える」ことを求めています。順番については、Visaが自社を先頭に置くことを推奨していますが、これは推奨であって義務ではありません。実務上は「同サイズで整列・特定ブランドの特別扱いをしない」が安全な設計です。
Q. Webサイト用のロゴを印刷物にも使えますか?
ブランドによります。JCBの加盟店ページで配布されるのはWebサイト掲載用のみで、印刷物用データは加盟店デスクへの申請が必要です。PayPayは印刷用の最小サイズ(ロゴ1で高さ5mm等)が別に規定されています。媒体が変わるときは、その媒体用の規定とデータを確認し直してください。
Q. 「ペイペイが使えます」とテキストで書くのは問題ありませんか?
カタカナ表記が問題です。PayPayのブランドガイドラインは和文表記を不可とし、「ペイペイ」「ぺいぺい」の表記を明確に禁止しています。テキストで案内する場合も欧文の「PayPay」を使ってください。
まとめ
決済ブランドロゴの掲載ルールは、「公式配布のマークを・契約ブランドだけ・無改変で」の3原則に集約されます。そのうえでブランド別の個性——Visaは掲載義務と先頭推奨、Mastercardは45pxと円幅1/4、JCB系は同サイズ整列、PayPayは数値の明快さと「ペイペイ」禁止——を押さえれば、決済ページの実装で迷うことはなくなります。
決済マークは、ユーザーが「このサイトで安全に買えるか」を判断する信頼のUIでもあります。規約を守った正規のマークを正しく並べることが、そのままコンバージョンの土台になります。
※本記事は2026年7月時点の各社公式規定(Visa加盟店向けブランドページ・Mastercard Brand Center・JCB加盟店ロゴページ・PayPayブランドガイドライン2024年12月版)に基づいています。規定は改訂されるため、実装前に必ず各社の最新版を確認してください。
