推測と類推の使い方|ロジカルとラテラルを実際に動かす2つの道具


推測とは、手元にある情報から、まだ確かめていない先を読むことです。類推とは、別の場所で通用した解き方を、いま目の前の問題に借りてくることです。推測はロジカルシンキング寄り、類推はラテラルシンキング寄りの働きをします。

「問い合わせが増えない」「このバナーだけ反応が悪い」「なぜか特定のページで離脱する」。こうした場面で頭の中で起きているのは、たいてい推測か類推のどちらかです。ところが現場では、この2つが混ざったまま「前もこうだったから」で決まっていきます。当たることもあります。問題は、外れたときに何が悪かったのか分からないことです。情報が足りないまま先を埋めたのか、借りてきた事例が的外れだったのか、切り分けられない。

この記事では、推測と類推を分けて扱えるようにします。とくに類推は「似ている」の中身を取り違えると必ず外れるので、借りる前に確認する4つの質問を用意しました。ロジカルシンキングとラテラルシンキングをどう行き来するかは ロジカルシンキングとラテラルシンキングの記事 で書いたので、ここではその2つを実際に動かすための道具の話をします。


推測と類推とは何か|ロジカルとラテラルの動かし方

まず2つを具体的な場面で分けます。アクセス解析を開いて、あるランディングページの直帰率が突出して高いことに気づいたとします。ここで「ファーストビューで何かが起きている」と読むのが推測です。手元にある数字から、まだ確かめていない部分に筋を通して埋めている。使っているのは目の前のデータだけで、外からは何も持ってきていません。

一方、同じ場面で「行列のできる店が入口に『本日のおすすめ』を出しているのは、並ぶ前に選ばせているからだ。あれをフォームの手前でやったらどうか」と考えるのが類推です。飲食店とランディングページには何の関係もありません。それでも解き方だけを持ってきている。手元のデータからは絶対に出てこない選択肢が、ここで初めて出てきます。

推測類推
やること手元の情報から、まだ確かめていない先を埋める別の場所で通用した解き方を、いまの問題に移す
近い思考ロジカルシンキング寄りラテラルシンキング寄り
出てくるもの筋の通った1つの答えいまの延長線上にない選択肢
持ち込む材料目の前のデータだけ関係のない領域の経験
典型的な外し方情報が足りないまま埋める「似ている」の中身を取り違える

ただし、この2つはきれいに分かれるわけではありません。手元の数字を大きく飛び越えた推測はラテラル的な働きをしますし、類推で借りてきたものが本当に同じ構造かを照合する作業は、ロジカルそのものです。あくまで推測はロジカルの要素が多く、類推はラテラルの要素が多い、という程度に捉えてください。厳密に線を引くことが目的ではなく、いま自分がどちらを使っているかを自覚することが目的です。


「似ている」には2種類ある|表面と構造

類推がうまくいくかどうかは、ほぼここで決まります。「似ている」には、表面が似ている場合と、構造が似ている場合の2種類があり、借りてよいのは後者だけです。

表面が似ている構造が似ている
何が同じか業種・見た目・使っているツール・規模効いている制約・詰まる場所・人が動く順番
見つけやすさすぐ目につく意識して探さないと出てこない
借りた結果形だけ真似て、効かない形は違うが、同じ効き方をする

例を出します。通販サイトのカートで購入をやめてしまう人が多い、という問題を考えます。ここで「同じ通販サイト」を探すのが表面の類似です。業種も見た目も近いので、いくらでも見つかります。しかし片方が定期購入で、こちらが単品購入だとしたら、買う人の迷い方はまったく違います。近いのに借りられない。

いっぽう、空港の保安検査の列を思い出すとどうでしょうか。通販とは何の関係もありません。それでも「やると決めた人が、手続きの途中で降りる」という詰まり方は同じです。同じなら、空港でやっている工夫を持ってこられます。列に並ぶ手前に「次に出すもの」を掲示しておけば、検査台での手間が減る。これを通販に移すと、カートに入る前の段階で「この先に必要になるもの(カード・住所・会員登録の要否)」を先に見せる、という案になります。

この「移るのは何か」については、認知科学に古くからの整理があります。デドレ・ゲントナーの構造写像理論では、類推において移されるのは対象そのものが持つ属性ではなく、対象どうしのあいだに成り立っている関係のほうだと説明されています(出典:Gentner, D. “Structure-Mapping: A Theoretical Framework for Analogy”, Cognitive Science, 1983)。空港と通販で共通しているのは、空港でも通販でもなく、「決めた人が途中で降りる」という関係のほうだ、ということです。


表面で借りると、なぜ外れるのか|現場の3パターン

表面の類似で借りてしまう場面は、だいたい次の3つに分かれます。どれも悪意なく起きますし、忙しいときほど起きます。

他社サイトの見た目を借りる

「この会社のサイト、動きがかっこいいので参考にしたい」から始まるパターンです。借りているのは見た目であって、その動きが解決していた問題ではありません。参考元は商品点数が3つしかないから大きく見せられるのであって、こちらが80点あるなら同じ構成は成立しません。制作側からは「参考サイトどおりに作った」ように見えるので、なぜ効かないのかが最後まで分からない。

過去案件をそのまま流用する

「前回の美容室の案件がうまくいったから、同じ構成で」というパターン。業種が同じでも、前回は個人店で意思決定者が1人、今回は5店舗で決裁者が複数、ということはよくあります。うまくいった原因が「意思決定が速かったこと」だったなら、業種は関係がなかったわけです。借りるべきだったのは構成ではなく、決裁の速さを前提にした進め方のほうでした。

「前もこうだった」で決める

いちばん多いのがこれです。「以前も同じ症状だったから、たぶん原因も同じ」。症状が似ていることと、原因が同じであることは別です。「特定の環境でだけ表示が崩れる」という症状は、キャッシュでも、フォントでも、読み込み順でも起こります。症状という表面で結んでしまうと、前回の原因を探しに行って空振りし、その間に本当の原因は放置されます。


類推はラテラル寄りの道具|どこから借りてくるか

借り先が近いほど、表面と構造が一緒についてきます。同業他社を見ると、業種も見た目も制約も全部似ているので、どれが効いている要素なのか分離できません。借り先が遠いほど、共通して残るのは構造だけになります。空港と通販に共通点があるとすれば、それは構造しかありえない。だから遠いところから借りたほうが、実は安全です。

では、遠い借り先はどうやって探すのか。業種で探すとどうしても近くなるので、動詞で探すのがおすすめです。いま自分が扱っている問題を、業種の言葉を使わずに動詞1つに落とします。

いまの問題動詞に落とす同じ動詞が起きている場所
フォームの途中で離脱される待たせる・入力させる病院の問診票、役所の窓口、空港の保安検査
プランを選んでもらえない選ばせる飲食店のメニュー、保険の窓口、家電量販店
更新されないまま放置される続けさせるジムの会員、習い事、家計簿アプリ
問い合わせ前に離れていく不安を残す初診の病院、初めて入る飲食店、中古車の販売

そして重要なのが、借り先は1つでなく2つ以上あげることです。1つだけだと、その事例の表面(病院なら「紙」「待合室」)と構造(「本人が来る前に済ませられる作業を前に出す」)が混ざったまま入ってきます。2つ並べると、共通していない部分が自動的に落ちて、構造だけが残ります。病院の問診票と空港の掲示に共通するのは、紙でも掲示板でもなく「詰まる地点より手前で準備を済ませる」ことだけです。ここまで絞れて初めて、自分の問題に移せる形になります。


推測はロジカル寄りの道具|借りた案をどう詰めるか

ここを飛ばすと、類推はただの思いつきで終わります。類推が作れるのは仮説までで、それが正しいかどうかは何も言っていません。借りてきた時点では「効くかもしれない」でしかない。ここから先が推測の仕事です。

推測の役割は、「この仮説が正しいとしたら、ほかに何が観測されるはずか」を先に言うことです。さきほどの「カートに入る前に必要なものを見せる」案なら、こうなります。

  • この案が効いているなら、カート到達後の離脱率が下がるはずだ
  • 準備の案内を足しただけなので、カートへの到達率そのものは大きく変わらないはずだ
  • もし到達率まで落ちたなら、案内が「面倒そう」に見えているということで、狙いと逆の効果が出ている

3つ目が書けているかどうかが分かれ目です。効いた場合の話だけをしていると、数字が動いても動かなくても「まあそういうこともある」で終わってしまいます。外れ方を先に書いておくと、結果が出た瞬間に判断できる。ここまで来て、はじめて検証の手順に落とせます。実際に何を見に行くかは Chrome DevToolsで仮説と検証を回す記事 にまとめてあります。


借りる前に確認する4つの質問

ここまでの内容を、その場で使える形にします。何かを借りてこようとしたときに、この4つを順番に確認してください。全部が埋まったら移してよい、埋まらないなら借り先を変える、という判定に使います。

  1. 何を借りるのか。見た目か、詰まり方か
  2. 借り先で効いていた制約は、こちらでも効いているか
  3. 借りたものが崩れる条件を、1つ挙げられるか
  4. 捨てられる場所で、小さく試せるか

質問1|何を借りるのか。見た目か、詰まり方か

借りたいものを、業種名と固有名詞を使わずに1文で書きます。「空港の掲示」ではなく「負荷がかかる地点の手前で、必要な準備を予告しておくこと」。書けなければ、まだ見た目しか捉えていません。固有名詞が消せないうちは移せない、と考えて構いません。

質問2|借り先で効いていた制約は、こちらでも効いているか

空港の掲示が効くのは、列に並んだら途中で抜けられないからです。抜けられるなら掲示の必要はありません。では自分の問題ではどうか。カートに入った人が途中で抜けられるなら、制約は同じではないので、別の効き方を考える必要があります。効いていたのは工夫そのものではなく、その工夫が乗っていた前提のほうです。

質問3|借りたものが崩れる条件を、1つ挙げられるか

「どんなときにこれは効かないか」を1つ書きます。この案なら「必要なものが少ない商品では効かない。むしろ手間が増えたように見える」。1つも挙げられないなら、それは強い仮説ではなく、検証できない仮説です。反証条件が書けない案は、結果が出ても学びが残りません

質問4|捨てられる場所で、小さく試せるか

類推は外れる前提の道具です。外れたときに引き返せる大きさで試します。全ページではなく1ページ、全商品ではなく1カテゴリ、恒久ではなく2週間。試せる形に落とせないなら、それは案の問題ではなく、進め方の問題です。引き返せない賭けにするくらいなら、対象を削って小さくするほうが先です。


4つの質問で詰まったときの分岐

どの質問で止まったかによって、次にやることが変わります。止まったこと自体は失敗ではなく、借り方のどこが弱いかを教えてくれる情報です。

詰まった場所起きていること次の一手
質問1で1文にできない借りたい対象を見た目でしか捉えていない借り先で「誰が・どこで・なぜ降りたか」を書き出し、固有名詞を消す
質問2で「効いていない」表面だけの類似だった借り先を変える。同じ制約が効いている場面を業種の外で探す
質問3で条件が出ない検証できない仮説になっている「効かないのはどんなときか」を先に書いてから案に戻る
質問4で試せない一発勝負の計画になっている対象を絞る。1ページ・1導線・期間限定のどれかに落とす

4つのうち2つ以上で止まるなら、その借り先はいったん諦めたほうが早いです。無理に通すより、別の場所を探すほうが結果的に速い。借り先は無限にあるので、粘る価値があるのはせいぜい1つ止まったときまでです。


ロジカル→ラテラル→ロジカルの各段で使う道具

ロジカルシンキングとラテラルシンキングは、片方を選ぶものではなく順番に回すものです。その回し方は別記事に書きましたが、実際に手を動かすとき、各段で使う道具は次のように分かれます。

やること使う道具
1. ロジカル問題を絞る。どこで何が起きているかを事実で確定する推測|手元の数字から当たりをつける
2. ラテラル前提を疑い、いまの延長線上にない選択肢を外から持ってくる類推|別の場所の解き方を借りる
3. ロジカル借りてきた案を、検証できる形にして潰す推測|成り立つなら他に何が観測されるかを言う

推測が2回出てくるのがポイントです。ラテラルの前後をロジカルで挟んでいるので、類推は「守られた状態」でしか使わないことになります。1段目で問題が絞れていないまま借りにいくと、何のために借りたのか分からない案が出てきますし、3段目を省くと思いつきのまま実装まで行ってしまう。自分がどちらに偏っているかの診断は ロジカルシンキングとラテラルシンキングの記事 にセルフチェックを置いてあります。

そしてもう1つ、3段目で確認しておきたいことがあります。借りてきた案が、誰の得になっているかです。自社だけが楽になる案、発注側だけが得をする案は、短期的には通っても続きません。この観点は 三方良しで施策を判定する記事 で手順にしてあるので、案を通す前に一度当ててみてください。


経験は年数では効かない|熟練度とは何か

同じ年数やっていても、借りるのがうまい人とそうでない人がいます。この差は経験の量ではありません。ここでいう熟練度とは、経験が構造で整理されている度合いのことです。作業の速さや正確さのことではない、という意味で、日常語の「熟練」より狭く使っています。

経験の整理のされ方には2通りあります。表面で整理されている人は、頭の中の引き出しが「あのEC案件」「あの美容室の案件」「あのWordPressの案件」という並びになっています。この並び方だと、似た見た目の案件が来たときしか過去の経験が出てきません。業種が変わった瞬間に、何年やっていても手ぶらになる。

構造で整理されている人は、引き出しが「決裁者が途中で変わった案件」「制約が後出しで来た案件」「担当者が現場を見ていなかった案件」という並びになっています。こうなっていると、業種がまったく違っても、詰まり方が同じ場面で過去の経験が出てきます。類推が上手い人は発想が豊かなのではなく、経験の並べ方が違うだけです。

表面で整理された経験構造で整理された経験
引き出しの見出し業種・規模・使った技術効いた制約・詰まった場所・崩れた順番
出てくる場面似た見た目の案件のときだけ業種が違っても、詰まり方が同じなら
年数を重ねると同じ引き出ししか開かなくなる借り先が増えていく

ちなみに、この「過去の似た案件から持ってくる」という手つきは、思いつきの領域ではなく正式な手法として整理されています。プロジェクトマネジメントには類推見積もり(analogous estimating)という技法があり、過去の似たプロジェクトの実績値(規模・コスト・期間・複雑さなど)を土台にして、いまのプロジェクトの同じ項目を見積もる概算手法として定義されています(出典:Project Management Institute。PMBOK Guide 第4版 p.172 の定義として掲載されているものです)。ここでも肝は「類似」の中身で、表面が似た案件を選ぶと見積もりはそのまま外れます。


AIと人間の弱点は、熟練度のあるディレクターで噛み合う

ここまでの話は、AIを使う場面でそのまま効きます。AIは推測も類推も回せます。手元の条件から先を埋めるのも、まったく別の分野から解き方を持ってくるのも、人より速く、量も出ます。だから人間の出番が減ると思われがちですが、現場で起きるのは逆です。候補を出す仕事の価値が下がり、候補を選ぶ仕事の価値が上がります

AIの弱点は、能力ではなく手元にある情報のほうにあります。この案件で誰が何に困っていて、どの制約が効いていて、過去に何を試して駄目だったのかは、渡さないかぎりAIの側にありません。だから出てくる候補は、構造が一致した借り先も、表面が似ているだけの借り先も、同じ確からしさで混ざります。5案出てきたうちのどれが的を射ているかは、案そのものを見ても分かりません。

人間の弱点は前の章で書いたとおりです。在庫が少なく、必要なときに自力で引き出せない。経験を表面で並べていれば、業種が変わった瞬間に手ぶらになります。2つの弱点は種類が違うので、そのまま噛み合います

AI熟練度のある人
候補を出す量と速さ多い・速い少ない・遅い
現場の文脈渡した分しか持たない持っている
表面と構造の見分け同じ確からしさで混ぜて出す4つの質問で分けられる
向いている役割候補を広げる候補に値段をつける

組み方はそのまま出てきます。AIに候補を広げさせ、熟練度のある人がその候補を4つの質問に通す。ディレクターの仕事は「案を出す人」から「案に値段をつける人」へ寄っていきます。そして候補が増えるほど、選ぶ側の差はそのまま結果の差になります。全員が同じ量の案を手に入れられる状況では、持っている案の数ではなく、捨てられる案の数で差がつくからです。

誤解のないように書いておくと、これはAIが推測や類推を苦手としている、という話ではありません。違うのは能力ではなく、持っている在庫の性質のほうです。現場の文脈は、こちらが渡さないかぎり存在しません。逆に言えば、質問1の「固有名詞を消した1文」や質問3の「崩れる条件」を書いて渡せるディレクターほど、AIから返ってくるものの質が上がります。AIとどう組むかは AI時代のコーディング学習法 でも触れています。


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明日からの練習|2つ並べて共通点を1行で書く

経験を構造で並べ直す作業は、まとまった時間を取らなくてもできます。やることは1つだけで、2つ並べて、共通することだけを1行で書く。1つの出来事をいくら深く振り返っても、表面と構造は分離しません。比べる相手がいて初めて、共通しない部分が落ちます。

  1. 今日うまくいった場面、または失敗した場面を1つ書く
  2. 業種も場所も違うのに、同じ詰まり方をした場面をもう1つ思い出す
  3. 2つに共通することだけを、固有名詞を使わずに1行で書く

3行目に残ったものが、次に借りられる形の経験です。「クライアントが決めきれなかった」ではまだ表面が残っています。「選択肢が3つ以上あって、判断基準を先に決めていなかった」まで削れれば、業種を問わず使えます。1日1つで十分で、続けると引き出しの見出しが入れ替わっていきます。

もう1つ、遊びながら鍛える方法もあります。水平思考クイズ(ウミガメのスープ)は、断片的な状況から「何が起きていたのか」を質問で絞り込むゲームで、まさに手元の情報から先を読む練習になります。ブラウザだけで遊べるものを作ってあるので、休憩時間に何問か解いてみてください。仕組みと問題の中身は 水平思考クイズを作った記事 に書いています。

なお、ここでいうラテラルな思考は、ひらめきや才能の話ではありません。この言葉を広めたエドワード・デ・ボノ自身、ラテラルシンキングを「違う考え方をするための構造化されたアプローチ(a structured approach for thinking differently)」と説明しています(出典:de Bono 公式サイト)。手順があるから練習できる、というのがこの記事全体の前提です。


よくある質問

Q. 推測と類推の違いは何ですか?

推測は手元にある情報から、まだ確かめていない先を埋めることです。類推は、別の場所で通用した解き方を、いま目の前の問題に借りてくることです。推測は目の前のデータだけを使うのに対して、類推は関係のない領域の経験を持ち込む点が決定的に違います。そのため推測はロジカルシンキングの要素が多く、類推はラテラルシンキングの要素が多くなります。

Q. 類推はどうすれば当たるようになりますか?

借り先を「表面が似ている場所」ではなく「詰まり方が似ている場所」から選ぶことです。同業他社は表面が似すぎていて、どの要素が効いているのか分離できません。業種の言葉を捨てて動詞に落とし、まったく違う分野で同じ動詞が起きている場面を2つ以上挙げると、共通しない部分が落ちて構造だけが残ります。

Q. 表面が似ているのか構造が似ているのかを見分けるコツはありますか?

借りたいものを、業種名と固有名詞を使わずに1文で書いてみてください。「空港の掲示」ではなく「負荷がかかる地点の手前で必要な準備を予告すること」と書ければ構造を捉えています。固有名詞が消せないうちは、まだ見た目しか見えていない状態なので、そのまま移すと外れます。

Q. 借りてきた案が外れたときはどうすればいいですか?

先に「崩れる条件」を書いてあれば、外れた理由がその条件に当てはまるかどうかを見るだけで済みます。当てはまるなら借り先の選び方の問題、当てはまらないなら仮説そのものの問題です。反証条件を書かずに試すと、結果が出ても何も学べないまま次の案に移ることになります。

Q. 経験が浅いうちは類推を使わないほうがいいですか?

そんなことはありません。借り先は仕事の経験に限らないからです。日常で見ている行列、券売機、病院の受付、乗り換え案内も、すべて借り先になります。むしろ業界の常識が薄いぶん、遠い場所から借りやすいという利点があります。足りないのは経験の量ではなく、借りる前に4つの質問を通す習慣のほうです。

Q. チームで類推を共有するにはどうすればいいですか?

案そのものではなく、4つの質問への答えを共有してください。とくに質問1(固有名詞を消した1文)と質問3(崩れる条件)が共有されていると、他のメンバーが同じ判断をたどれます。案だけを共有すると「なぜそれを選んだのか」が失われ、次に似た場面が来たときにまた一から探すことになります。


まとめ|借りる前に、何を借りるのかを言葉にする

  • 推測は手元の情報から先を埋める道具で、ロジカルシンキングの要素が多い
  • 類推は別の場所から解き方を借りる道具で、ラテラルシンキングの要素が多い
  • 借りてよいのは構造が似ている場合だけで、表面が似ているだけの借り先は必ず外れる
  • 借りる前に4つの質問を通す。2つ以上で詰まったら借り先を変えるほうが速い
  • 熟練度は年数ではなく、経験が構造で整理されている度合いで決まる
  • 整理し直す方法は、2つ並べて共通することだけを1行で書くこと

類推は当たれば強く、外れれば無駄になる道具です。当てにいくのではなく、外れたときに理由が分かる形で使うことが、結局いちばん速く上達します。借りる前に「何を借りるのか」を1文で書く。それだけで、思いつきと類推が分かれます。

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