WordPressとClaude Codeは、WordPress 6.9でコアに搭載された「Abilities API」と、公式プラグイン「MCP Adapter」を使って連携できます。連携すると、Claude CodeがWordPressサイトの機能を発見・実行できるようになり、コンテンツ運用やサイト開発をAIエージェントに任せるワークフローが組めます。
ただし、この分野は2025年末から2026年にかけて足場が大きく入れ替わりました。かつて主流だったAutomattic製の「wordpress-mcp」プラグインは2026年1月にアーカイブされ、現在の公式主経路はWordPress本体のAbilities API+MCP Adapterです。旧プラグイン前提の解説記事の手順は、いま導入するとそのまま使えません。
この記事では、WordPress公式ドキュメント・公式GitHubリポジトリ・Anthropic公式ドキュメントを中心とする一次情報(いずれも2026年7月確認)を根拠に、現行の接続手順を3つの経路(MCP Adapter・wp-cli・REST API)で整理します。あわせて、AIにサイトを触らせるうえで欠かせないセキュリティ設計と、旧仕様との違いもまとめます。
WordPressとClaude Codeを連携する3つの経路
Claude CodeからWordPressを操作する経路は、大きく3つあります。それぞれ仕組みと向き不向きが違うので、先に全体像を押さえておきましょう。
| 経路 | 仕組み | 向いている場面 |
|---|---|---|
| ① MCP Adapter(主経路) | WordPress 6.9のAbilities APIをMCPで公開する公式プラグイン。Claude Codeがサイトの機能を「発見して実行」できる | AIエージェント連携の標準ルート。今後の拡張もここに集約 |
| ② wp-cli | Claude CodeのBashからwpコマンドを直接実行 | ローカル環境・SSH接続できるサーバーでの一括操作 |
| ③ REST API直 | curl等でWordPress REST APIを叩く(アプリケーションパスワード認証) | MCPを使わない最小構成。既存スクリプト資産の流用 |
本記事は①MCP Adapterを主経路として解説し、②③は代替・併用の経路として手順を示します。3つは排他ではなく、「コンテンツ操作はMCP、サーバー作業はwp-cli」のような使い分けが実務的です。
Abilities APIとMCP Adapterとは
Abilities APIとは、プラグイン・テーマ・WordPressコアが持つ機能を、標準化された機械可読な形式で登録・公開できるようにする基盤システムです。Make WordPress Core(2025年11月10日)で告知され、2025年12月2日リリースのWordPress 6.9でコアに搭載されました。全Webサイトの41.2%がWordPressで動いている(W3Techs・2026年7月時点)ことを踏まえると、「世界で最も普及したCMSがAIエージェント向けの共通口を持った」変化と言えます。
一方のMCP Adapterは、このAbilities APIをMCP(Model Context Protocol)に橋渡しする公式プラグインです。WordPress Developer Blog(2026年2月4日)が明記している通り、MCP機能はコアには含まれず、別プラグインとして導入します。「WordPress本体に組み込まれたのはAbilities APIまで」という線引きは正確に押さえておきましょう。
有効化したMCP Adapterは、サイトの /wp-json/mcp/mcp-adapter-default-server にHTTPエンドポイントを公開し、Claude Codeは discover-abilities(機能一覧)・get-ability-info(詳細取得)・execute-ability(実行)の3ツールでサイトの機能を発見・実行します。MCPそのものの仕組みや設定ファイルの実体は、Claude CodeのMCP・Hooks・Skills活用ガイドで詳しく解説しています。
WordPress 7.0の「AIクライアント」「コネクタ」との関係
コア側のAI基盤は6.9で止まっていません。WordPress 7.0「Armstrong」(2026年5月20日リリース)では、生成AIモデルと通信するAIクライアントがコアに入り、外部AIサービスとの接続を「コネクタ」画面で一元管理できるようになりました。実際の管理画面(7.0.2で確認)では「設定」→「コネクタ」にAnthropic(Claude)・Google・OpenAIの3つがプリセットとして並びます。公式のAIプラグインを足すと、画像の生成・編集、タイトルや抜粋の作成、altテキスト提案などがサイト内で完結します。
本記事のMCP連携とは向きが逆である点に注意してください。コネクタ+AIプラグインは「WordPressの中からAIを呼ぶ」機能、MCP Adapterは「外のAIエージェント(Claude Code)がWordPressを操作する」仕組みです。どちらもAbilities APIと同じ流れの上にある補完関係で、公式も「AIクライアントとAbilities APIの組み合わせ」を7.0の柱として位置づけています。編集画面での生成支援はコネクタ、開発・運用の自動化はMCP連携、と使い分けるのが現在地です。
事前準備:バージョン要件と認証
MCP Adapter経路で必要な準備は次の3点です。
- WordPress 6.9以上・PHP 7.4以上のサイト(MCP Adapter v0.5.0時点の公式要件。2026年7月時点の最新は7.0.2なので、通常どおり更新していれば要件は満たしています)
- HTTPSで配信されているサイトURL(認証情報を送るため必須)
- アプリケーションパスワード(管理画面のユーザー編集画面から発行)
認証にはWordPress 5.6以降標準のアプリケーションパスワードを使います。WordPress公式ハンドブック(2026年7月確認)によると、これはBasic認証(RFC 7617)で、認証情報は必ずHTTPS経由で送信します。発行したパスワードは通常のログインパスワードとは別物で、いつでも個別に失効できるのがAI連携向きの利点です。
接続手順①:MCP Adapter(主経路)
WordPress側の設定は次の3ステップです。
- MCP Adapterプラグインを導入・有効化する(公式GitHubのリリースzipから)
- MCPに公開したいability(機能)を登録・公開設定する
- 接続用ユーザーのアプリケーションパスワードを発行する
プラグイン導入はwp-cliを使うと1行で済みます。
wp plugin install https://github.com/WordPress/mcp-adapter/releases/latest/download/mcp-adapter.zip --activateClaude Code側は、HTTPトランスポートでエンドポイントを登録します。アプリケーションパスワードはBasic認証なので、Authorizationヘッダーには「ユーザー名:アプリケーションパスワード」をbase64エンコードした値を渡します。
# base64値の作成(ユーザー名:アプリケーションパスワード)
echo -n "username:xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx" | base64
# Claude CodeにHTTPトランスポートで登録
claude mcp add --transport http wordpress https://example.com/wp-json/mcp/mcp-adapter-default-server --header "Authorization: Basic 上で作成したbase64値"ここで1つ重要な注意があります。Anthropic公式ドキュメントの –header サンプルには「Authorization: Bearer」形式の例がありますが、あれはOAuth系サービスの例です。WordPressのアプリケーションパスワードはBasic認証なので、Bearerをそのまま流用すると認証に失敗します(旧Automatticプラグインの解説記事はJWT=Bearer前提のものが多く、混同しやすいポイントです)。なお、この組み合わせの完成サンプルは公式ドキュメントにまだ無いため、上記は公式仕様(アプリケーションパスワード=Basic認証)からの組み立てです。導入時はテスト環境での動作確認をおすすめします。
接続手順②:wp-cli(Bash経由)
ローカル開発環境(Local・Dockerなど)やSSHで入れるサーバーなら、MCPを介さずClaude CodeのBashツールからwp-cliを直接叩くのが最短です。wp-cliはWordPress公式のコマンドラインツールで、「The command line for WordPress. No browser required.」(wordpress.org/cli)と定義されています。
# 投稿一覧
wp post list --post_type=post --post_status=publish
# 下書き作成
wp post create --post_title="タイトル" --post_status=draft
# 既存投稿の更新
wp post update 123 --post_title="新しいタイトル"
# メディアの取り込み
wp media import ./image.png --title="画像タイトル"Claude Codeに「wp-cliでこのサイトの下書き一覧を出して」と指示すれば、コマンドの組み立てから実行・結果整理まで一気に行われます。テーマ開発の実務(テンプレート階層やfunctions.phpの構成)とあわせて進めたい方は、WordPress開発ガイドまとめのクラスタが土台として役立ちます。
接続手順③:REST APIを直接叩く
MCPもwp-cliも使わない最小構成が、REST APIをcurlで直接叩く方法です。認証は同じくアプリケーションパスワードで、公式ハンドブックのサンプルはこの形です。
curl --user "USERNAME:APP_PASSWORD" https://example.com/wp-json/wp/v2/users?context=editClaude CodeはBashからcurlを実行できるので、この経路でも投稿の取得・作成・更新は一通り可能です。リモートの本番サイトを扱う場合、実は「REST API+アプリケーションパスワード」が最も枯れていて情報も多い経路です。MCP Adapterがまだ若い(v0.5.0)ことを考えると、安定運用重視ならこの経路から始めて、MCPには段階的に移行する判断も現実的です。
実践ワークフロー:記事運用を任せてみる
接続できたら、まずはリスクの低いコンテンツ運用から任せるのが定石です。代表的なワークフローは次の流れです。
- Claude Codeに記事ドラフト(HTML)を生成させる
- 下書きステータスでWordPressに投入させる(公開はしない)
- 人間が管理画面でレビューして公開する
- 慣れてきたら既存記事の一括メンテナンス(内部リンク追加・メタ情報更新など)に広げる
プロンプトの例です。「公開までさせない」境界を明示するのがポイントです。
この構成案をもとに記事ドラフトを作り、WordPressに下書きとして投入してください。
- ステータスは必ず draft のまま。publish への変更は禁止
- カテゴリとタグは既存タームから選ぶ(新規作成しない)
- 投入後、下書きのIDと編集画面URLを報告することデザイン側の連携(FigmaのデザインをClaude Codeでコード化してテーマに落とす)と組み合わせると、デザイン→実装→入稿までの一連の流れをAIエージェント中心に回せます。デザイン側の手順はFigmaとClaude Codeを連携する方法を参照してください。
セキュリティ設計:AIに渡す権限を絞る
最重要の前提として、WordPress Developer Blog(2026年2月4日)は「MCPクライアントはログイン済みWordPressユーザーとして振る舞う」と明記しています。つまりClaude Codeは、接続に使ったユーザーの権限をそのまま継承します。管理者アカウントで繋げば、AIは管理者として振る舞えるということです。実務では次の設計を推奨します。
- MCP接続専用のユーザーを作り、必要最小の権限(投稿操作なら編集者以下)に絞る
- 公開するabilityは読み取り系を優先し、書き込み系は必要になってから追加する
- いきなり本番に繋がず、ステージング環境で運用パターンを固めてから移す
- アプリケーションパスワードは用途ごとに発行し、不要になったら即失効する
- 公開操作(draft→publish)は人間の作業として残す
旧仕様との違いに注意
WordPressのMCP連携を検索すると、旧Automattic製プラグイン前提の記事が数多くヒットします。公式GitHub(2026年7月確認)によると、Automattic/wordpress-mcpは2026年1月19日にアーカイブされ、「今後の開発とサポートはWordPress/mcp-adapterを使うこと」と告知されています。読み替えの対応表は次の通りです。
| 項目 | 旧仕様(〜2025年) | 現行仕様(2026年7月確認) |
|---|---|---|
| プラグイン | Automattic/wordpress-mcp(v0.2.5で停止・アーカイブ済み) | WordPress/mcp-adapter(v0.5.0・公式主経路) |
| 基盤 | プラグイン独自実装 | WordPress 6.9コアのAbilities API |
| 認証 | JWT(Authorization: Bearer) | アプリケーションパスワード(Authorization: Basic) |
| 機能の増やし方 | プラグイン側の実験的ツール(run_api_function等) | abilityとして登録・公開する標準形式 |
特に認証方式の違い(Bearer→Basic)は接続失敗の典型原因です。解説記事の公開日が2025年以前なら、旧仕様の可能性をまず疑ってください。
WordPressとClaude Codeの連携に関するFAQ
Q. WordPress本体にMCPは組み込まれていますか?
いいえ。コアに入ったのは6.9のAbilities APIと、7.0のAIクライアント・コネクタ(AI接続の一元管理)までで、MCP機能は別プラグインのMCP Adapterとして導入します。「コアは基盤・MCPはプラグイン」という役割分担が公式の設計です。
Q. 旧Automattic製のwordpress-mcpはもう使えませんか?
リポジトリは2026年1月19日にアーカイブされ読み取り専用になっており、公式が「今後はWordPress/mcp-adapterを使うこと」と告知しています。動作はしても更新・サポートは止まっているため、新規導入には推奨されません。
Q. MCP Adapterだけで投稿の作成や更新までできますか?
標準では読み取り系が中心です。WordPress 6.9コアに同梱されるabilityはサイト情報・ユーザー情報・環境情報の取得の3種で、投稿のCRUDはabilityを追加登録して公開する前提の設計です。すぐに投稿操作をしたい場合は、wp-cliまたはREST API経路の併用が現実的です。
Q. 認証はどの方式を使いますか?
WordPress 5.6以降標準のアプリケーションパスワード(Basic認証・HTTPS必須)です。旧Automatticプラグイン時代のJWT(Bearer)とは別方式なので、古い記事のヘッダー例を流用しないよう注意してください。
Q. 本番サイトに直接つないでも大丈夫ですか?
推奨しません。MCPクライアントは接続ユーザーの権限をそのまま継承するため、まずステージング環境で運用パターンを固め、本番接続時は専用ユーザー+最小権限+下書きまで(公開は人間)の境界設計をセットにするのが安全です。
Q. wp-cliとMCP Adapterはどちらを使うべきですか?
ローカル環境やSSHで入れるサーバーの一括作業ならwp-cli、リモートサイトをAIエージェントの標準的な作法(ツール発見→実行)で扱いたいならMCP Adapterが向いています。排他ではないので、環境ごとに使い分けるのが実務的です。
まとめ
WordPressとClaude Codeの連携は、6.9のAbilities API搭載で「公式の共通口」ができ、実用段階に入りました。要点をまとめます。
- 現行の公式主経路はWordPress 6.9のAbilities API+MCP Adapterプラグイン
- 認証はアプリケーションパスワード(Basic認証・HTTPS必須)。旧仕様のBearerと混同しない
- wp-cli・REST APIは今も有効な代替経路。環境と成熟度で使い分ける
- AIは接続ユーザーの権限を継承する。専用ユーザー+最小権限+公開は人間、が安全設計の基本
- 旧Automattic wordpress-mcp前提の記事は現行手順として使えない
まずはローカル環境+wp-cliで「下書き投入まで」を試し、感触を掴んでからMCP Adapter経路に進むのがおすすめです。
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